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本節では,入手し得た公式の統計資料に基づき,アメリカ,イギリス,ドイツ連邦共和国及びフランスの欧米4か国における最近10年間の窃盗の動向を,主要な手口別に概観し,我が国における窃盗の動向と比較する。
窃盗のとらえ方や統計処理の方法に差異があるため,特に各国間の正確な比較は困難であるが,窃盗は,各国共通の,しかも全犯罪に占める比率の高い犯罪であり,法制や統計方法の相違によって受ける影響が比較的少ないので,およその傾向を把握することは可能である。 II-28表は,1973年から1982年までの間における窃盗の発生率(人口10万人当たりの認知件数)と全犯罪に占める比率の推移を見たものである。発生率は,各国とも,ほぼ一貫して上昇しており,1973年の発生率を100とすると,1982年のそれは,アメリカ134,イギリス185,ドイツ連邦共和国167,フランス204,日本124となっている。 全犯罪に占める窃盗の比率は,各国とも大きな変動はなく,アメリカは90%強,イギリスは80%強,ドイツ連邦共和国は65%前後,フランスは60%前後,日本は85%前後と,それぞれ高率で推移している。 次に,主要な手口別の構成比の推移をII-29表で見ると,次のとおりである。 まず侵入盗について見ると,我が国では構成比がかなり低下してきているのに対して,アメリカ,イギリス及びフランスでは,横ばいないし上昇傾向にある。自動車盗(オートバイ盗を含む。)は,我が国では急上昇しているが,欧米4か国では横ばい若しくは減少傾向にある。車上ねらいは,ドイツ連邦共和国ではほぼ横ばいであり,イギリス,フランス及び我が国では上昇している。万引きの構成比は,各国ともほぼ横ばいである。 また,手口別に各国間を比較してみると,フランスで,侵入盗及び万引きの構成比が小さく,自動車盗及び車上ねらいのそれが大であることが分かる。 II-28表 窃盗の発生率及び全犯罪に占める比率の推移(1973年,78年〜82年) II-29表 窃盗の主要手口別構成比の推移(1973年,78年〜82年) II-30表 全犯罪及び窃盗の主要手口別検挙率(1982年) II-30表は,1982年における手口別の検挙率を見たものであり,我が国の検挙率が極めて高い。次に,検挙人員について,手口別の少年比の推移を見たのが,II-31表である(ここでは,できる限り外国と対応させるべく,我が国でも「少年」を18歳未満の犯罪少年に限っている。)。 これによると,ドイツ連邦共和国,フランス共に,対象者の年齢幅が,前者は18歳未満,後者は13歳以上18歳未満と,我が国のそれより広いにもかかわらず,窃盗全体でも,侵入盗を除くいずれの手口においても,我が国よりも少年比が低いことが分かる。また,我が国では,いずれの手口においても,少年比がほぼ上昇傾向にあるが,両国には,そのような傾向は認められない。 最後に,1982年における受刑者総数と,窃盗による受刑者数を見たのが,II-32表である。これによると,我が国における受刑者総数に占める窃盗による受刑者数の比率は,男女共に,ドイツ連邦共和国とほぼ同じで,イギリスに比べると低くなっている。 II-31表 窃盗検挙人員の主要手口別少年比の推移(1973年,78年〜82年) II-32表 窃盗による受刑者数(1982年) |