I-39表は，最近10年間における交通関係業過を除く刑法犯検挙人員及び人口比(有責人口1,000人に対する検挙人員の比率)を男女別に示したものである。女子の検挙人員は，昭和49年の5万8,261人からおおむね増加の傾向をたどり，58年には前年より3,375人増加して8万3,200人となっている。女子の人口比も，この間ほぼ上昇の傾向を示しており，58年は1.7となっている。また，女子比は，前年よりわずかに高率の19.0である。

I-39表　男女別刑法犯検挙人員(昭和49年〜58年)

　I-40表は，昭和58年における交通関係業過を除く女子刑法犯罪名別検挙人員を49年及び前年と対比して示したものである。58年においても，検挙人員の首位を占めるものは窃盗の7万487人で，総数の84.7%を占め，前年に比べて2,798人(4.1%)の増加となっている。次いで，横領2,600人，傷害2,080人，詐欺1,306人などと，前年どおりの順位となっているが，その構成比を見ると，いずれも4%に満たない。しかし，実数は少ないものの，恐喝，傷害，強盗などの増加が目立ち，最近における女性犯罪の凶悪・粗暴化傾向を窺わせている。女子比が高く，その意味で女性犯罪の典型とも言い得るものとして，嬰児殺が挙げられるが，58年の検挙人員は100人で，女子比は94.3になっている。そのほか，比較的女子比の高いものは，自殺関与，窃盗などである。

I-40表　女子刑法犯罪名別検挙人員(昭和49年，57年，58年)

　次に，昭和58年の交通関係業過を除く女子刑法犯検挙人員の年齢層別構成比を49年と比較したものが，I-41表である。女子刑法犯検挙人員に占める女子少年の比率は49年では29.7%にすぎなかったが，58年には49.2%に上昇し，最近における女性犯罪の増加が，主として女子少年の増加によることを示している。，また，成人においては，20歳代の者が，49年の23.8%から58年の10.6%へと低下しているのをはじめ，30歳代，40歳代の順で低下の傾向を示しているのに対し，50歳代及び60歳以上の者の占める比率は漸増の傾向にあり，年齢層別構成比から見た最近の女性犯罪者の特徴としては，20歳未満の若年者層及び50歳以上の高齢者層の占める各比率が増大傾向にあると言えよう。

I-41表　女子刑法犯年齢層別検挙人員(昭和49年，58年)

　なお，昭和58年における女子刑法犯検挙人員中，罪名別の年齢層別構成比を見ると，検挙人員の大半を占める窃盗では，女子少年が50.2%を占めている。女子少年の占める比率の高い罪名を見ると，実数はそれ程多くはないが，恐喝(88.8%)，暴行(82.7%)，傷害(80.5%)等の粗暴な犯罪が挙げられる。