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 昭和58年版 犯罪白書 第4編/第2章/第6節/2 

2 少年の保護観察

 少年の保護観察に関しては,保護観察処分少年及び少年院仮退院者について述べる。
 (1)概 況
 保護観察所が昭和57年中に新たに受理した人員は,前掲III-54表のとおりで,保護観察処分少年は6万3,519人,少年院仮退院者は4,644人であり,前年に比べて,保護観察処分少年が4,305人,少年院仮退院者が359人増加している。

IV-52表 保護観察対象者の非行種類別受理人員(昭和55年〜57年)

 昭和55年以降における受理人員の推移を,業過を除く刑法犯,道路交通法違反を除く特別法犯,虞犯及び交通犯罪(業過と道路交通法違反)の4種に大別した上,非行の種類別で見ると,IV-52表のとおりである。保護観察処分少年では,交通犯罪,財産犯,粗暴犯,麻薬・覚せい剤事犯などの増加が目立っている。少年院仮退院者では,麻薬・覚せい剤事犯の増加が著しく,57年は55年の2倍に近い数を示している。
 IV-53表は,交通短期保護観察を除く保護観察処分少年について,その保護処分歴を見たものである。昭和57年の受理人員では,保護処分歴のない者が77.5%と大部分を占めているが,保護観察に付されたことのある者の比率は,前年より若干上昇して19.7%となっている。
 昭和57年に受理した,交通短期保護観察を除く保護観察処分少年について,受理時における年齢を見ると,15歳以下が11.9%,16歳・17歳が39.9%,18歳以上が48.2%となっているが,前年に比べると,15歳以下の年少者の増加(前年は9.7%)が注目される。また,受理時に中学校在学中の少年も増加しており,57年では,前年より481人増の1,749人となっている。

IV-53表 保護観察処分少年の保護処分歴別受理人員(昭和55年〜57年)

 (2)保護観察の実施状況
 IV-54表は,交通短期保護観察を除く保護観察処分少年及び少年院仮退院者のうち,処遇が困難とされる暴力団関係者,暴走族構成員,シンナー等濫用者,精神障害者及び覚せい剤事犯者について,昭和58年3月末現在の保護観察対象者総数に占めるそれぞれの比率を示したものである。保護観察処分少年では,シンナー等濫用者が18.7%,暴走族構成員が7.9%,覚せい剤事犯者が3.8%などとなっている。少年院仮退院者では,シンナー等濫用者が24.8%と高い比率を示し,覚せい剤事犯者が10.3%,暴走族構成員が8.2%などとなっている。

IV-54表 保護観察対象者の非行の態様等による類型別人員(昭和58年3月318現在)

 交通短期保護観察を除く保護観察処分少年及び少年院仮退院者の昭和57年における保護観察終了事由別人員は,前掲III-61表のとおりであるが,IV‐55表は,これを最近3年間について見たものである。57年に終了した保護観察処分少年では,保護観察の経過が良好で解除により終了した者が67.0%を占めているが,前年に比べると,その比率はわずかながら低下している。また,少年院仮退院者においても,良好措置である退院により終了した者の比率は,前年の19.9%から18.7%へと低下している。

IV-55表 保護観察対象者の終了事由別人員構成比[1] 保護観察処分少年                 (昭和55年〜57年)

 IV-56表は,交通短期保護観察を除く保護観察処分少年を一般事件(以下「一般」という。)によるものと交通事件(以下「交通」という。)によるものに分け,少年院仮退院者を長期処遇と短期処遇に分けて,それぞれの終了事由と保護観察を実施した期間を見たものである。保護観察処分少年では,解除の占める比率は,「一般」の54.9%に対して,「交通」では82.0%と高く,また,再犯等を理由に新たな処分を受けて保護処分が取り消された者の比率は,「一般」では17.4%であるが,「交通」では6.8%と低くなっている。解除までの保護観察の実施期間は,「一般」では,1年を超える者が93.7%を占めるが,「交通」では,9月以内の者が52.2%を占めており,「一般」に比べて「交通」は,解除の占める比率が高い上に,解除までの期間の短い者の占める比率も高い。次に,少年院仮退院者では,退院の占める比率は,長期処遇の10.5%冫こ対して,短期処遇は32.2%と高く,また,不良措置である戻し収容と保護処分取消しの合計の比率は,長期処遇では22.6%であるが,短期処遇では16.0%である。退院までの保護観察実施期間は,長期処遇では,1年を超える者が68.3%を占めるが,短期処遇では,9月以内の者が51.7%を占めており,長期処遇に比べて短期処遇は,退院の占める比率が高い上に,退院までの期間が短い者の占める比率も高くなっている。
 (3)  交通短期保護観察
 交通犯罪により保護観察に付される少年は,昭和30年代後半から次第に増加し,その処遇に当たっては,従来の個別処遇に合わせて講習会や座談会などの集団処遇が実施されていたが,比較的短期間で保護観察が解除される者の割合が逐年増加してきた。そこで,増大する交通犯罪少年に対処するため,法務省保護局と最高裁判所家庭局との間で協議がなされた結果,交通犯罪で保護観察処分の決定を受けた少年のうち,家庭裁判所により短期の保護観察が適当である旨の処遇勧告が付された者については,保護観察官による集団処遇を中心とする特別の処遇を集中的に実施し,特に支障がない限り,3,4か月で保護観察を解除する交通短期保護観察が,52年4月1日から実施されている。

IV-56表 保護観察対象者の終了事由・保護観察実施期間別人員構成比[1] 保護観察処分少年                    (昭和57年)

 IV-57表は,最近3年間における交通短期保護観察処分少年の受理・処理状況を示したものである。交通短期保護観察に付された少年は,年々増加しており,昭和57年では3万5,642人で,前年に比べて2,559人増加している。また,同年中に保護観察を終了した少年は3万3,689人であるが,その約99%は解除によっている。
 交通短期保護観察に付された少年に対する処遇は,保護観察官による安全運転に関する討議を中心とする集団処遇と,本人からの毎月1回の生活状況の報告とを主な内容としている。保護観察開始後3,4か月を経過して,その間に車両の運転による再犯がなく,集団処遇に出席し,生活状況の報告を行い,かつ,本人の更生上特に支障がなければ,保護観察の解除が行われる。しかし,6か月を超えても解除できない状態の者に対しては,当該処分をした家庭裁判所の意見を聴いて,交通事件で一般の保護観察処分に付された者と同様な処遇が行われる。昭和57年に実施した集団処遇の回数等は,IV-58表のとおりである。

IV-57表 交通短期保護観察処分少年の受理・処理状況(昭和55年〜57年)

IV-58表 交通短期保護観察処分少年に対する集団処遇実施状況(昭和55年〜57年)