収容鑑別の対象になった少年について，いくつかの側面から，その特性を見ると次のとおりである。
　(1)非行と年齢層
　IV-36表は，非行と年齢層との関係を見たものである。
　非行では，窃盗が32.7%と最も多く，以下，虞犯12.5%，道路交通法違反10.0%，傷害8.7％，覚せい剤取締法違反8.2%などとなっている。最近4年ないし5年間の変化を見ると，傷害と覚せい剤取締法違反が増えている反面，毒物及び劇物取締法違反が減少している。
　年齢層は，年長少年(本節では18歳以上の者をいう。)が45.7%で最も多く，次いで，中間少年35.9%，年少少年(本節では15歳以下の者をいう。)18.3%の順となっているが，年少少年の比率は前年に続いて上昇している。女子のみについて見ると，年長少年は年少又は中間少年の約2分の1である。
　非行と年齢層との関係を男女別に見ると，男子では，いずれの年齢層においても窃盗がおよそ3分の1以上を占め，次いで，年少少年では虞犯及び傷が，中間少年では道路交通法違反が，年長少年では道路交通法違反及び覚せい剤取締法違反がそれぞれ高率である。

IV-36表　非行・年齢層別構成比(昭和57年)

IV-37表　非行・非行時の身上別構成比(昭和57年)

　女子では，虞犯が年少及び中間少年でそれぞれ76.1%，46.9%と高率を占め，覚せい剤取締法違反は年長少年に集中している。また，窃盗は年長になるに従って高率になるが，顕著な差は見られない。
　(2)非行時の身上
　IV-37表は，非行と非行時の身上との関係を見たものである。非行時に何らかの保護的措置が継続していた者は36.1%を占めており，その大部分が保護観察である。前年に比べると，少年院仮退院中の者及び補導委託中の者の比率がやや増えている。また，非行との関係で見ると，毒物及び劇物取締法違反，銃刀法違反，詐欺・横領，覚せい剤取締法違反などにおいて，何らかの保護的措置を受けていた者が多いことが分かる。
　(3)非行と入所回数
　IV-38表は，非行と少年鑑別所入所回数との関係を見たものである。初めて入所した者が73.0%と大部分を占めている。非行と入所回数との関係を見ると，再入者(2回目以上の者)が多いのは，覚せい剤取締法違反，毒物及び劇物取締法違反及び財産犯であり，再入者が少ないのは性犯罪である。
　(4)知能及び精神状況
　知能を知能指数によって見ると，知能指数59以下は1.2%，60〜69は4.3%，70〜79は19.8%，80〜89は25.4%，90〜99は26.0%，100〜109は14.9%，110〜119は4.9%，120以上は1.4%となっている。
　性格像を，法務省式人格目録(MJPI)の結果からタイプに分けて見ると，まず，男子については，「附和雷同，追従傾向が強く，軽率に行動しやすい」タイプ(IV型)の少年が最も多く，全体の24.1%を占めており，次に多いのが，「気が弱く，過敏で，神経質な」タイプ(I型)の少年で，10.3%を占めている。そして，「自己中心的，むら気で，爆発的・衝動的な行動に走りやすい」タイプ(II型)，「自分の弱点を隠し，表面的に他人とうまく接していこうとする」タイプ(V型)，「偏執的で，疑い深く，ひがみっぽい」タイプ(III型)がそれぞれ6.2%，6.1%，1.7%である。

IV-38表　非行・入所回数別構成比(昭和57年)

　女子では，IV型(21.8%)，I型(12.6%)，II型(7.8%)，V型(5.1%)，III型(1.5%)の順となっている。
　精神診断の結果，精神障害の認められた者は総数の2.6%であり，その内訳は，精神薄弱1.6%，精神病質0.1%，神経症0.1%，その他の精神障害0.8%である。また，精神障害者の占める比率の高い非行は，放火(27.7%)及び殺人(9.6%)である。
　(5)入所前の問題行動
　少年鑑別所入所前における問題行動を，男子と女子に分けて見ると，性経験のある者は，男子が72.4%，女子が90.5%，家出歴のある者は，男子が46.6%，女子が87.2%，覚せい剤又は麻薬濫用歴のある者は，男子が11.6%，女子が28.1%，有機溶剤濫用歴のある者は，男子が61.5%，女子が68.5%，自動車の無免許運転歴のある者は，男子が68.5%，女子が22.2%であり，自動車の無免許運転歴を除いては，全般的に，女子に入所前の問題行動のある者が多いことが分かる。また，男子の性経験，薬物濫用，無免許運転，女子の薬物濫用，無免許運転は逐年徐々に増加している。