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 昭和58年版 犯罪白書 第3編/第1章 

第3編 犯罪者の処遇

第1章 概  説

 本編では,警察等の捜査機関によって検挙された犯罪者が,その後,検察・裁判・矯正・更生保護の各段階で受ける処遇の実情を紹介するが,III‐1図は,成人犯罪者処遇の流れを説明するものである(少年事件については,第4編第2章第1節において説明する。)。
 警察等は,犯人を検挙すると必要な捜査を行い,微罪事件(犯情の特に軽微な窃盗・詐欺・横領事件等で,検察官が司法警察員に対し,月報として報告すれば足りると指定した事件)及び交通反則通告制度による反則金の納付のあった事件を除き,事件を検察官に送致する。このほか,検察官が自ら事件を認知し,又は告訴・告発を受けて捜査することがある。いずれの場合も,検察官としての捜査を遂げた上,犯罪の成否を確定し,犯罪が成立する場合においては,処罰の要否に関する諸般の事情を考慮して,起訴するか不起訴にするかを決める(このような考慮に基づいて不起訴にすることを,起訴猶予という。)。裁判所に起訴された事件は,略式手続による場合は,簡易・迅速な書面審理によって罰金・科料の裁判がなされ,公判手続による場合は,公判が開かれた上,裁判が行われる。有罪の裁判は,死刑,懲役・禁錮・拘留(以下「自由刑」という。),罰金,科料に大別され,懲役・禁錮,罰金には執行猶予(保護観察の付される場合と,付されないいわゆる単純執行猶予の場合とがある。)が付されることがある。有罪の裁判が確定しても,執行猶予が付されている場合は,猶予期間中に再度罪を犯して罰金以上の刑に処される等のことがなく,無事にこの期間を経過すれば,刑の言渡しは効力を失うこととして更生が期待されている。保護観察付執行猶予の場合は,猶予期間中,保護観察官及び保護司の指導監督下におかれる。自由刑の実刑が確定した者及び自由刑の執行猶予が取り消された者は,刑の執行として,刑務所等の矯正施設に収容される。矯正施設における行刑は,自由刑の執行を通じて矯正処遇を行い,受刑者の改善更生と社会復帰を図ることを目的としている。受刑者は,刑期の満了によって釈放され,社会に復帰するが,刑期の満了前であっても,地方更生保護委員会の決定によって,仮釈放(懲役・禁錮においては仮出獄,拘留においては仮出場)が許される。仮出獄者は保護観察に付され,保護観察官及び保護司の指導監督下で,改善更生と再社会化が図られる。なお,売春防止法違反で補導処分に付された成人の女子は,婦人補導院に収容されるが,仮退院が許可されると保護観察に付される。

III-1図 刑事司法における犯罪者(成人)処遇の流れ