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2 各特別法犯の動向 特別法犯のうち,交通関係,薬物関係及び外国人関係については,第2章以下で取り上げるので,ここでは保安関係,財政経済関係,風俗関係及び労働者保護関係の各特別法犯について,その動向及び昭和57年における特徴を概観する。
(1)保安関係 I-16表 特別法犯の検察庁新規受理人員 I-17表は,最近5年間における保安関係の特別法犯の動向を見たものである。銃刀法違反,火薬類取締法違反及び酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律(以下「酒酔い迷惑防止法」という。)違反は一貫して減少を続け,軽犯罪法違反も,昭和54年から3年連続増加していたものの,57年には減少に転じている。I-17表 保安関係特別法犯の検察庁新規受理人員 I-18表 財政経済関係特別法犯の検察庁新規受理人員 (2)財政経済関係I-18表は,最近5年間における財政経済関係の特別法犯の動向を見たものである。昭和57年においては,法人税法違反,出資の受入・預り金及び金利等の取締等に関する法律違反及び不正競争防止法違反が前年より増加している。 所得税法違反及び法人税法違反について,最近5年間の法人・個人別処理状況を見ると,I-19表のとおりである。所得税法違反は,その性質上個人がほとんどを占めているが,法人税法違反は,法人の代表者等が法人の業務に関し,違反行為をした場合に,行為者のほか法人も処罰されるもので,昭和57年においては108法人が処罰されている。 I-19表 所得税法違反及び法人税法違反事件の法人・個人別処理状況 国税庁の資料により,昭和57年4月から58年3月までの1年間における告発件数,脱漏所得額,脱税額等を示したのが,I-20表である。所得税法違反及び法人税法違反の総数では,告発件数は171件(前年より4件増),脱漏所得総額は438億9,500万円(同46億2,600万円,11.8%増),告発1件当たりの脱漏所得額は2億5,700万円(同2,200万円,9.4%増)で,いずれも査察制度開始以来35年間の最高の数値となっている。I-20表 所得税法違反及び法人税法違反の告発件数・脱漏所得額・脱税額 さらに,各税法違反ごとに見ると,所得税法違反は,告発件数58件,脱漏所得額133億3,400万円,脱税額110億7,200万円で,前年度に比べ,告発件数は11件減少し,脱漏所得額及び脱税額共に約4割の減少となっている。これに対し,法人税法違反は,告発件数113件,脱漏所得額305億6,100万円,脱税額163億2,900万円で,前年度に比べ,告発件数は15件増加し,脱漏所得額及び脱税額共に約9割の増加となっている。次に,所得税法違反及び法人税法違反の両者を合わせて脱税した業種を見ると,製造業が46件と最も多く,以下,医療業の18件,卸売業の17件,小売業の13件,不動産取引業の12件がこれに続いている。脱税の手口について見ると,製造業及び卸売業では売上除外と架空原価の計上が,医療業,小売業及び不動産取引業等では売上除外が,それぞれ主体となっている。 脱税によって得た不法利益の隠匿方法について見ると,その大半は従来どおり,預・貯金,有価証券,不動産等であるが,預金による場合は仮名預金,無記名預金が圧倒的に多い。特異な形態のものとしては,多額の現金,宝石,金地金を保有していたもの,重要文化財に指定されている刀剣を取得していたものなどがある。 (3)風俗関係 I-21表は,最近5年間における風俗関係の特別法犯の動向を見たものである。売春防止法違反並びに競馬法違反及び自転車競技法違反(その大部分は,私設車・馬券の発売,いわゆるのみ行為及びその相手方となる行為に関するものである。)は,いずれもおおむね減少傾向を示しており,昭和55年まで増加傾向にあった風俗営業等取締法違反は,56年,57年と連続して減少し,過去数年間減少傾向にあった職業安定法違反及び児童福祉法違反は,57年には増加に転じているのが注目される。 I-21表 風俗関係特別法犯の検察庁新規受理人員 (4)労働者保護関係法務省刑事局の資料により,昭和53年以降の5年間における労働者保護法規違反の検察庁新規受理人員を見ると,I-22表のとおりである。労働基準法違反は,56年まで減少を続けていたが,57年にはわずかに増加し,労働安全衛生法違反は減少傾向を維持し,船員法違反は56年,57年と連続して増加傾向にある。労働者保護法規違反としての職業安定法違反は,職業紹介事業等に関する違反であり,54年に急増した後,55年,56年と減少していたが,57年には再び増加している。 I-22表 労働者保護法規違反の検察庁新規受理人員 労働基準法違反及び労働安全衛生法違反について,その違反条項を見ると,労働基準法違反では,昭和57年の新規受理人員1,583人中,第24条(賃金の支払いに関するもの)違反が793人(50.1%)を占め,次いで,第62条(深夜業に関するもの)違反が446人(28.2%)であり,この両者で約8割を占めている。次に,労働安全衛生法違反では,57年の新規受理人員1,826人中,第20条及び第21条(危険防止のため事業者の講ずべき措置に関するもの)の違反が1,140人(62.4%),第61条(一定の危険業務に無資格者を就労させることの禁止)違反が267人(14.6%)などとなっている。 |