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この白書は,昭和57年を中心とした最近の犯罪の動向と犯罪者処遇の実情を概説したものである。
我が国の犯罪情勢は,全体的・長期的に見ると,ほぼ平穏に推移しているように見受けられるが,国民の生命や身体等の安全を直接脅かす暴力犯罪の動向について見ると,最近,特に市民生活に与える不安や害悪には著しいものがあり,犯罪情勢全般の表面的な傾向に安んじていることを許さない諸般の問題が存する。 すなわち,暴力犯罪の組織的集団である暴力団が,その勢力を伸張維持するため,一面においては相互の対立抗争事犯を続発させ,他面,一般の経済活動に介入し,また,違法な活動分野,特に,覚せい剤取引を支配し,その使用者を増大させている。一方,金融機関強盗,エレベーター利用犯罪をはじめ,少年による暴力犯罪,なかでも,家庭・学校内暴力など現代の病理面を象徴する犯行が多発の傾向を示し,市民生活に新たな不安をもたらしている。 こうした諸情勢にかんがみると,この機会に,暴力犯罪の実情を明らかにして犯罪対策に資することは,現下の刑事政策における緊要な課題であると思われる。このような観点から,本白書では,市民生活と暴力犯罪に焦点を当て,我が国の暴力犯罪の現状,暴力犯罪者の特質及び問題点を明らかにするように努め,さらに,欧米諸国の暴力犯罪の実情についても紹介し,若干の国際比較を試みたものである。 終わりに,この白書を作成するに当たり,法務省各部局はもとより,最高裁判所事務総局,警察庁,その他関係機関,欧米諸国政府等から協力と援助を受けたことに改めて謝意を表するとともに,この白書に関する責任は,専ら当研究所にあることを明らかにしておきたい。 昭和58年10月 常 井 善 法務総合研究所長 |