IV-70表は,1976年から1980年までの5年間における薬物犯罪の検挙人員を態様別に見たものである。検挙人員の総数は,1976年以降,逐年増加し,1980年には,5年間で最高の1万7,158人となっている。これを態様別に見ると,所持犯が総検挙人員の81.8%に当たる1万4,030人である。密輸犯は1,186人で,1976年に比べると約2倍に増加している。
次に,薬物事犯検挙人員を年齢層別に区分して,その構成比を見ると,IV-71表のとおりである。これによると,1976年では,21歳以上25歳未満の者が35.8%で最も多く,次に多い17歳以上21歳未満の者(25.7%)を加えると,この年齢層の者が61.5%を占めていたが,逐年減少し,1980年では49.7%になっている。これに替わって,25歳以上の者が,1976年の37.2%から増加を続けて,1980年では488.6%になり,特に,30歳以上の者は,1976年に比べて約2倍に増加しているのが注目される。
IV-70表 薬物犯罪検挙人員イギリス(1976年〜80年)
IV-71表 薬物事犯検挙人員年齢層別構成比イギリス(1976年〜80年)
IV-72表は,1978年及び1979年の両年における,薬物犯罪の有罪人員について,その処分別,実刑期間別及び罰金額別に,それぞれの構成比を見たものである。1979年では,実刑に処せられた者は7.4%であるが,そのうち,刑期1年以下の者は63.4%である。刑期7年を超える者20人について見ると,薬物種類別では,コカインが8人,大麻が6人,ヘロインが5人などであり,犯罪の態様別では,密輸犯が15人,供給目的の所持犯が2人などである。なお,覚せい剤事犯は,575人中135人(23.5%)が実刑に処せられている。罰金に処せられた者のうち,罰金額が20ポンドを超え50ポンド以下の者は,56.7%を占めて最も多い。500ポンドを超える者63人について見ると,そのうちの57人が密輸犯である。
IV-72表 薬物事犯処分等構成比イギリス(1978年,79年)
IV-73表 規制薬物押収量イギリス(1976年〜80年)
IV-73表は,1976年から1980年までの5年間における主な規制薬物の押収量の推移を見たものである。コカインの押収量は,逐年増加して,1980年には,1976年の約4倍の約40kgになっている。大麻の押収量は,他の薬物と比較して,常にその量が多く,1980年には2万9,000kgに達している。薬物の押収量から見ると,イギリスにおける薬物犯罪は,コカイン,ヘロイン,大麻,あへん等の薬物を中心としたものであることを示していると言えよう。