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 昭和57年版 犯罪白書 第4編/第2章/第4節/3 

3 薬理作用による犯罪

 IV-47表は,最近3年間における覚せい剤関連犯罪の検挙人員について見たものである。昭和56年における検挙人員は687人であり,前年よりも164大減少している。このうち,覚せい剤の薬理作用により犯罪を起こした者は,総数の61.7%(424人)であり,この比率は,最近3年間では大差がない。薬理作用による犯罪のうち,殺人は11人(前年は25人)で,前年より減少しているが,放火は26人(前年は10人),逮捕・監禁は18人(前年は9人)であり,いずれも前年よりかなりの増加を示している。また,覚せい剤の入手を目的とした犯罪による検挙人員は230人(前年は205人)であり,このうち,窃盗が153人(66.5%)で最も多く,次が恐喝の32人(13.9%)となっている。

IV-47表 罪名別覚せい剤関連犯罪の検挙人員(昭和54年〜56年)

 IV-48表は,法務省刑事局へ報告のあった東京,大阪及び神戸の各地方検察庁の精神衛生診断室において,薬物中毒(嗜癖を含む。)と診断された被疑者の薬物種類別人員を見たものである。
 昭和56年に同室において精神障害があると診断された被疑者は,併せて522人であるが,そのうち,薬物中毒と診断された者は74人(14.2%)であり,薬物中毒者のうち37人は,薬物の影響により心神喪失又は耗弱が認められて不起訴処分となっている。また,濫用した薬物の種類では,覚せい剤が59人(79.7%)で最も多く,次いで,有機溶剤の10人(13.5%),睡眠剤の5人(6.8%)の順となっている。

IV-48表 薬物の種類別薬物中毒被疑者の状況(昭和52年〜56年)

IV-49表 罪名別薬物中毒被疑者の状況(昭和52年〜56年)

 IV-49表は,上記薬物中毒被疑者の罪名を見たものである。昭和56年においては,窃盗が12人(16.2%)で最も多く,次いで,殺人の10人(13.5%),傷害・暴行の8人(10.8%)の順であるが,殺人のうち8人は,覚せい剤中毒と診断された者である。