前の項目 次の項目 目次 図表目次 年版選択 | |
|
序
近年,覚せい剤濫用を主とする薬物犯罪は激増の一途をたどり,今や,我が国において大きな社会問題となっている。そこで,この白書では,覚せい剤を中心とする薬物犯罪に焦点をあて,その実態と,それによって示唆される対策を明らかにすることに努めた。 本編は5章から成り,第1章では,薬物の種類と危険性,取締法規の変遷及び戦後における薬物犯罪の動向と現状を概説し,第2章では,法務総合研究所が実施した覚せい剤事犯に対する特別調査の結果等に基づき,覚せい剤事犯者の属性並びに量刑の実情(対象者は,昭和55年10月1日から同年12月末日までに第一審裁判所において有罪の言渡しを受けた者),覚せい剤事犯受刑者の特性(対象者は,56年12月1日現在受刑中の者),覚せい剤濫用経験のある少年院収容者の特質(対象者は,56年8月1日現在在院中の者),覚せい剤事犯により保護観察付執行猶予に処せられた者の状況(対象者は,54年9月1日から同年11月末日までに保護観察所が受理した者)をそれぞれ分析するとともに,最近,特に問題となっている覚せい剤に対する暴力団の関与状況,巧妙化している密輸入事犯の実態,通り魔事件等に見られる覚せい剤の薬理作用の影響下における犯罪及び増加傾向にある覚せい剤の少年・家庭への浸透状況について言及し,第3章では,検察,裁判,矯正,更生保護の各分野における薬物犯罪者に対する処遇の実情を概説した。第4章では,我が国以上に薬物濫用禍にある欧米3箇国及びアジア諸国における薬物犯罪の現状及び取締り状況などを紹介し,第5章では,以上を総括しつつ,薬物犯罪激増の要因と背景及び今後の展望について言及した。 |