保護観察は,犯罪者や非行少年に通常の社会生活を営ませながら,遵守事項を守るように指導監督するとともに,必要な補導援護を行うことによって,その改善更生を図ろうとするものである。
保護観察の対象となる者は,[1]家庭裁判所の決定により保護観察に付された者(以下「保護観察処分少年」という。),[2]地方更生保護委員会の決定により少年院を仮退院した者(以下「少年院仮退院者」という。),[3]地方更生保護委員会の決定により仮出獄した者(以下「仮出獄者」という。),[4]刑の執行を猶予され保護観察に付された者(以下「保護観察付執行猶予者」という。),[5]地方更生保護委員会の決定により婦人補導院を仮退院した者(以下「婦人補導院仮退院者」という。)であり,その保護観察の期間は,[1]保護観察処分少年については,保護処分決定の日から20歳に達するまでであるが,20歳に達するまでの期間が2年に満たない者の場合は2年,[2]少年院仮退院者については,原則として出院の日から20歳に達するまで,[3]仮出獄者については,出所の日から残刑期間の満了の日まで,無期刑の言渡しを受けて仮出獄を許された者については終身であるが,少年時に無期刑の言渡しを受けた者の場合は10年,[4]保護観察付執行猶予者については,判決確定の日から執行猶予期間の満了の日まで,[5]婦人補導院仮退院者については,出院の日から補導処分の残期間の満了の日までである。
最近5年間に保護観察所が新たに受理した保護観察対象者の人員は,II-63表のとおりであり,昭和56年における受理総人員は,前年より3,219人増加して8万6,871人である。56年の受理人員を種類別に前年と比較すると,保護観察処分少年において2,892人の増加,少年院仮退院者において222人の増加,保護観察付執行猶予者において278人の増加が見られるが,仮出獄者においては170人の減少となっている。なお,56年における婦人補導院仮退院者の受理はない。
II-63表 保護観察新規受理人員(昭和52年〜56年)
昭和56年の新規受理人員を罪名・非行名別に見ると,II-64表のとおりである。保護観察処分少年では,道路交通法違反が最も多く30.3%を占め,以下,窃盗24.0%,業過14.2%の順となっており,少年院仮退院者では,窃盗が41.8%で最も多く,虞犯10.1%,覚せい剤取締法違反7.1%がこれに次いでおり,仮出獄者では,窃盗33.0%,覚せい剤取締法違反20.1%,業過7.8%の順であり,保護観察付執行猶予者では,窃盗が28.8%で最も多く,次いで,覚せい剤取締法違反24.2%,道路交通法違反12.8%となっている。総数では,窃盗28.7%,道路交通法違反18.6%の順に多いが,覚せい剤取締法違反の11.5%がこれに次いで第3位を占めていることが注目される。
昭和56年の新規受理人員を性別・年齢層別に見ると,II-65表のとおりである。性別では,女子の占める割合が総数において6.8%と低く,特に,仮出獄者では4.3%にすぎない。年齢層別に見ると,少年院仮退院者において,20歳以上の者が11.6%を占めている。仮出獄者では,30歳代の者が39.2%と最も多く,次いで40歳以上,20歳代と続き,19歳以下の者は0.1%にすぎないが,保護観察付執行猶予者では,20歳代の者が最も多く45.9%を占め,30歳代,40歳以上と続き,19歳以下の者は1.6%である。
II-64表 保護観察新規受理人員の罪名・非行名別構成比(昭和56年)
II-65表 保護観察新規受理人員の性別・年齢層別構成比(昭和56年)
昭和56年の新規受理人員を当初に予定された保護観察期間別に見ると,II-66表のとおりである。保護観察処分少年では,1年を超え2年以内の者が50.4%であり,73.6%の者が3年以内である。少年院仮退院者では,1年以内の者が38.6%であり,63.1%の者が2年以内である。仮出獄者では,3月以内の者が64.2%と過半数を占め,1年を超える者は4.2%にすぎない。一方,保護観察付執行猶予者では,保護観察期間の長い者が多く,2年を超える者が96.3%を占めている。
II-66表 保護観察新規受理人員の保護観察期間別構成比(昭和56年)