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 昭和57年版 犯罪白書 第2編 /第4章/第1節/1 

第4章 更生保護

第1節 仮釈放

1 概  況

 仮釈放とは,矯正施設に収容されている者を,収容期間満了以前に仮に釈放して社会復帰の機会を与える措置の総称であり,これには,懲役又は禁錮の受刑者に対する仮出獄,拘留又は労役場留置中の者に対する仮出場,少年院収容中の者に対する仮退院,婦人補導院収容中の者に対する仮退院の4種類がある。
 仮釈放の許否を決める権限は,高等裁判所所在地ごとに置かれている地方更生保護委員会に属し,同委員会は,仮出場の場合を除いて,自らの職権で審理を開始することができるが,通常は,矯正施設の長の申請に基づいて審理を開始している。最近3年間における仮釈放審理事件の受理人員を見ると,II-56表のとおりである。昭和56年における仮出獄審理事件の受理人員は,前年より690人(3.8%)減少して1万7,448人となっている。なお,地方更生保護委員会が申請を受理した後において,矯正施設内での規律違反等仮釈放の申請を相当としない事情が生じたときは,矯正施設の長が仮釈放の申請を取り下げることがある。56年においては,仮出獄審理事件1,006件,少年院仮退院審理事件64件について,それぞれ仮釈放の申請が取り下げられた。

II-56表 仮釈放審理事件の受理人員(昭和54年〜56年)

 仮釈放審理事件を受理した地方更生保護委員会においては,指名された主査委員が個々の収容者について詳細な調査を行うとともに,原則として,本人に面接し,この結果に基づいて,主査委員を含む3人の委員で構成される合議体で仮釈放の許否が決定される。ただし,仮出場審理にあっては,主査委員の面接は法律上義務づけられていないが,必要と認められるときは面接を行うこととされている。
 仮釈放の許否を決定するに当たっては,本人の資質,生活歴,矯正施設内における生活状況,将来の生活計画,帰住後の環境等を総合的に考慮するとともに,仮釈放を許可するときは,本人の社会復帰に最も適当と認められる時期を考慮することとされている。最近3年間における仮釈放の許否状況は,II-57表のとおりであり,仮出獄審理事件において棄却率の低下が認められる。なお,地方更生保護委員会は,仮釈放の許可決定をした後,釈放の日までの間に,矯正施設内での規律違反等仮釈放の執行を相当としない事情が認められたときは,仮釈放の許可を取り消す旨の決定をすることができる。昭和56年においては,仮出獄許可の取消決定326件,少年院仮退院許可の取消決定165件がそれぞれなされた。

II-57表 仮釈放の許否状況(昭和54年〜56年)

 仮釈放を許された者は,仮出場の者を除いて,保護観察に付される。仮釈放期間中に遵守事項に違反し,又は再犯等があったときは,仮釈放を取り消されて矯正施設に再収容されることがある。これに対し,仮出場を許された者については,保護観察に付されることもなく,また,仮出場を取り消されて矯正施設に再収容されることもない。