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 昭和57年版 犯罪白書 第2編 /第3章/第2節/9 

9 交通犯罪受刑者の処遇

(1) 交通犯罪受刑者の収容状況
 II-52表は,業過(その大多数は,交通犯罪によるものである。)及び道路交通法違反の新受刑者について,刑名・刑期・罪名別に見たものである。最近の傾向として,刑名別に見ると,懲役受刑者の数が増加し,禁錮受刑者の数が減少している。昭和56年では,前年に比べて,懲役受刑者は157人の増加,禁錮受刑者は75人の減少となっており,交通犯罪によって入所した受刑者の中で,懲役受刑者の占める比率は87.6%となっている。また,罪名別では,道路交通法違反により懲役に処せられた者の比率が増大しており,56年では,交通犯罪による懲役受刑者の70.1%に達している。
 II-53表は,交通犯罪新受刑者について,年齢層別の人員を見たものである。20歳代以下は減少し,30歳代から50歳代までの者は各年齢層とも増加している。
(2) 交通犯罪受刑者の処遇
 交通犯罪受刑者については,一定の基準により特定施設に集禁して開放的処遇を実施している (禁錮受刑者については,昭和36年から実施していたが,交通犯罪による懲役受刑者の増加に伴い,51年から東京矯正管区管内を最初として,懲役受刑者の集禁が行われるようになった。)。その集禁基準は,開放的処遇が適当と判定された成人の受刑者で,[1]交通事犯以外の犯罪による懲役刑を併有しないこと,[2]交通事犯以外の犯罪による受刑歴がないこと,[3]刑期がおおむね3月以上であること,[4]心身に著しい障害がないことの諸条件を満たすものとされている。

II-53表 交通犯罪新受刑者の年齢層別人員(昭和54年〜56年)

 集禁施設における処遇は,開放的処遇として,生活指導,職業訓練,職業指導等を活発に行うことにその特色がある。生活指導については,遵法精神,人命尊重及び責任観念の養成に重点が置かれている。職業訓練としては,自動車運転科・整備科のほかに,左官,溶接,ボイラー運転,電気工事,農業及び園芸などの訓練を実施している。また,職業指導については,各人の自動車運転に対する適性,将来の生活設計などを考慮して,職業技能の開発が行われており,自動車の運転適性がないと認められる者及び自動車運転の職業から転職することを希望する者に対しては,転職指導を積極的に実施している。