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5 覚せい剤取締法違反 I-115表は,覚せい剤取締法違反により懲役刑に処せられた者について,覚せい剤の第1の流行期である昭和26年から32年までと第2の流行期である47年以降の科刑状況及び執行猶予率を見たものである。執行猶予率について見ると,第1の流行期では,26年の72.2%から逐年下降し,31年には32.3%,32年には17.9%にまで低下している。第2の流行期では,51年の64.2%を最高に下降傾向を示しているが,56年においても,なお50%を超えており,この両者の間には大きな相違が認められる。また,執行猶予者中,保護観察に付される者の比率を見ると,第2の流行期では,47年の30.1%を最高に50年の17.5%にまで下降し,その後は起伏を示しながらも上昇し,56年には26.0%となっている。
I-115表 覚せい剤事犯者の懲役刑科刑状況及び執行猶予率(昭和26年〜32年,47年〜56年) なお,実刑に処せられた者のうち,初犯者(過去に罰金以上の刑に処せられたことのない者)の占める比率を見ると,昭和47年以降は,すべて7%未満であり,初犯で実刑に処せられる者は極めて少ない。I-116表は,昭和26年以降32年までと47年以降55年までの各年次に執行猶予の言渡しを受けた者について,保護観察の有無別に,その取消しの状況を見たものである。まず,保護観察付執行猶予について見ると,第1の流行期では,対象者数は少ないが,29年に54.5%を記録している。第2の流行期では,47年及び48年は32%台であったが,49年以降は41%台を記録し,執行猶予期間未経過の者を含む53年で,既に42.2%となっており,取消率の上昇傾向が認められる。また,取消しを受けた者のうち,同一罪名(覚せい剤取締法違反)による再犯で取り消された者の比率を見ると,第2の流行期では,47年の50.0%を除き,いずれも60%を超えており,最高は53年の76.3%である。 次に,単純執行猶予を言い渡された者について,その取消しの状況を見ると,第1の流行期では,取消率は10%台であったが,第2の流行期では,49年,51年に20%を超え,執行猶予期間未経過の者を含む52年及び53年で,既にそれぞれ25.3%,22.5%を記録しており,取消率の上昇傾向が認められる。また,取消しを受けた者のうち,同一罪名による再犯で取り消された者の比率は,第1の流行期で60%台ないし70%台の年次が多く,第2の流行期では,47年の33.3%を最低に上昇傾向を示し,52年以降は70%を超えており,特に,54年,55年には,それぞれ79.7%,78.1%と約8割を占めるに至っている。 I-116表 覚せい剤事犯者の懲役刑執行猶予取消人員及び取消率(昭和26年〜32年,47年〜55年) 保護観察付執行猶予と単純執行猶予を比べると,取消率は,前者が後者のおおむね2倍であり,同一罪名による取消率は,最近,後者が前者を上回っている。 |