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 昭和56年版 犯罪白書 第3編/第2章/第3節/3 

3 刑務作業

(1) 概  況
 刑務作業は,刑法上定役に服することが義務とされている懲役受刑者の作業が中心となるが,ほかにも,これに準ずることとされている労役場留置者の作業,法律上は作業を強制されない禁錮受刑者,拘留受刑者及び未決拘禁者による請願作業がこれに含まれる。昭和55年末における刑務作業の就業率は,懲役受刑者では94.3%,労役場留置者では86.7%,禁錮受刑者では89.9%,未決拘禁者では1.7%となっている。
 昭和55年度における刑務作業の内容を見ると,契約業者との間で解約・減産をした件数は203件に上り,受刑者約3,000人分の作業が失われたが,代替作業の導入に努め,この間,1日平均約4万人が就業し,年間約52億円の作業費を使用して,約175億円の生産を上げている。作業費と生産額の比率を回収率と言うが,それは,335%であり,前年度の324%を上回る成績を収めている。
 刑務作業の形態は,その性質・目的から,生産作業,職業訓練及び自営作業に分かれており,その業種は,木工,印刷,洋裁,金属,革工,農耕等の20余種に及んでいる。作業の運営は,作業の生産性の向上と刑務作業に服する者の勤労意欲のかん養,職業的技能及び知識の習得,規律ある生活の維持,集団生活への順応,忍耐心・集中心の養成を図ることにより,健全な社会人として復帰させることを目的として行われている。III-49表は,昭和54年度及び55年度の刑務作業の概況を示したものである。

III-49表 業種別就業延べ人員,支出額及び生産額(昭和54年度,55年度)

(2) 職業訓練
 受刑者の職業訓練は,受刑者に対し,職業に必要な技能を習得させ,又はその技能を向上させることを目的として,総合訓練,集合訓練及び自所訓練の三つの形態で行われている。総合訓練は,全国各施設から適格者を選定し,指定された7箇所の総合職業訓練施設(中野・山口・山形の各刑務所,川越・奈良・佐賀・函館の各少年刑務所)において実施されている。III-50表は,これら総合職業訓練施設における昭和55年度の履修状況を示したものである。集合訓練及び自所訓練は,それぞれ各矯正管区及び施設ごとに訓練種目を定めて実施されており,55年度では集合訓練施設は26庁,自所訓練施設は41庁に達している。III-51表は,55年10月31日現在における職業訓練の実施状況を示したものである。職業訓練の実施に当たっては,できる限り,公の免許・資格を取得させるように努力が払われている。III-52表は,55年度における免許・資格の取得状況を示している。

III-50表 労働省職業訓練局長履修証明書受領者数(昭和55年度)

III-51表 職業訓練種目別人員(昭和55年10月31日現在)

III-52表 免許・資格取得状況(昭和55年度)

(3) 構外作業
 構外作業は,刑務所が管理する構外作業場において行われるほか,民間企業の協力を得て,一般事業所においても実施されている。また,実施の態様として,「泊込作業」(作業場に泊まり込んで行うもの)と「通役作業」(施設から作業場へ通勤して行うもの)とがある。昭和56年4月末現在,全国で泊込作業場は14箇所,就業人員333人,通役作業場は33箇所,就業人員276人であり,合計すると,構外作業場が47箇所,就業人員が609人(全就業人員の約1.5%)となっている。
(4) 就業条件
 刑務作業の時間は,1日につき8時間(土曜出よ4時間),1週につき44時間で,週休制が採用されており,作業中の休息時間も認められている。また,作業環境や作業の安全衛生管理については,労働基準法や労働安全衛生法等の趣旨に沿ってその整備が図られている。
 刑務作業に従事した者には,作業賞与金が支給される。この賞与金の性格は,賃金ではなく,恩恵的・奨励的なもので,原則として釈放時に給与されるが,在所中家族にあてて送金し,又は所内生活で用いる物品の購入等に使用することも許されている。毎年基準額の増額が図られているが,昭和55年度の1人当たりの平均月額は,前年度に比べ92円増の2,716円となっている。
 なお,受刑者には,一定の条件下で自己の収入となる自己労作が許されている。昭和56年3月末現在,535人がこの労作に従事し,1人1月平均5,877円の収入を得ている。