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 昭和55年版 犯罪白書 第4編/第2章/第1節/3 

3 保護観察

(1) 新規受理者の特徴
ア 性別及び年齢層
 仮出獄を許可された者は,原則として,残刑の期間保護観察に付されるが,仮出獄者の保護観察における新規受理人員を男女別に見ると,昭和35年以降,男子が97.1%ないし98.2%であって,そのほとんどを占めている。女子の占める比率は極めて低いが,49年以降は微増しており,54年では,35年以降最高の2.9%となっている。

IV-12表 仮出獄の許否状況,出所事由別人員及び受刑者の年末収容人員

 次に,年齢層別構成を昭和35年以降について見ると,20歳代は,30年代では50%台を占めているが,40年代では40%台となり,54年では29.9%となっている。一方,30歳代,40歳代の者の占める比率は,35年では前者が30.8%,後者が11.3%であったが,その後おおむねそれぞれ上昇し,54年では前者が39.1%,後者が22.9%に増加している。なお,50歳以上の者の占める比率は,5%台から8%台へと若干の上昇が見られるにすぎない。
イ 罪  名
 新規受理人員の主要罪名を,昭和30年から50年までの5年ごと及び51年から54年までについて見ると,IV-13表のとおりである。窃盗は,常に最も高い比率を示しているものの,次第に低下してきており,また,詐欺,強盗も減少を示してきているのに対し,覚せい剤取締法違反が50年以降増加しているのが目につく。すなわち,30年では,窃盗56。2%,詐欺11.9%,強盗6.4%の順序であったが,40年には,窃盗47.5%,詐欺9.2%,傷害7。2%,50年では,窃盗34.7%,業過15.1%,強姦7.0%の順序となり,54年では,覚せい剤取締法違反が12.8%で窃盗の34.3%に次ぎ,第3位が業過で10.3%となっている。

IV-13表 仮出獄者新規受理人員の主要罪名別構成比

ウ 保護観察の期間
 保護観察を行うに当たっては,指導監督及び補導援護を適切に行いうる期間が確保される必要があるが,仮出獄者の中には,保護観察期間が短い者がかなり見られる。昭和41年,45年,50年及び51年から54年までの仮出獄者の保護観察期間の状況は,IV-14表のとおりである。保護観察期間が1月以内の者は,41年では33.1%を占め,その後減少してはいるが,54年でも20.5%を占めている。一方,1月を超え2月以内の者では,41年以降おおむね増加を続け,41年が23.5%であったのに対し,54年では29.9%となっている。保護観察期間が2月以内の者を合計すると,41年の56.6%から54年の50.4%へと減少したものの,なお仮出獄者の過半数を占めている。

IV-14表 仮出獄者新規受理人員の保護観察期間別構成比

(2) 処遇の推移
ア 応急の救護
 保護観察に付されている者が,負傷又は適当な住居や職業がないなどのため,更生が妨げられるおそれがある場合,食事,衣料の給与,医療の援助等の一時保護のほか,更生保護会等に委託して継続的に食事付宿泊等を供与する継続保護の応急の救護の措置がとられている。保護観察実施人員中に占める保護措置人員の比率を見てみると,一時保護では,41年から47年まではほぼ5%台であるところ,48年以降は3%台に減少している。継続保護では,41年から47年までは約16%台であるが,48年から上昇し,51年以降は21%台に増加している。
イ 保護観察終了時の成績
 仮出獄者に対する保護観察の実施結果を,昭和30年から50年までの5年ごと及び51年から54年まで,保護観察終了時における仮出獄者の状態について,良好,普通,不良等の成績別の構成比で見ると,IV-15表のとおりである。良好な状態で終了する者の比率は,30年から37年までは20%台であったが,38年から42年までは80%台に上昇し,43年からは更に増加して40%台となり,49年に49.2%に至ったが,その後は次第に下降して,54年には32.5%となっている。一方,不良な状態で終了する者の比率は,30年から38年まではおおむね10%であったが,39年から41年までは9%台となり,更に,42年以降は7%ないし8%台に下降しており,概して,不良な状態で終了する者の比率は減少している。

IV-15表 仮出獄者の保護観察終了時における成績別構成比

ウ 刑務所への再入状況
 仮出獄者に対する保護観察の実施結果を刑務所への再入状況で見てみると,刑務所出所後第3年までに再入所する仮出獄者の比率は,おおむね減少傾向を示している。IV-16表は,昭和35年から50年までの5年ごと及び51年,52年の刑務所出所者につき,仮出獄による出所,満期釈放による出所別に,出所後第3年までの再入状況を見たものである。仮出獄で出所した者については,35年に出所した者では32.9%の者が再入所しているが,40年以降に出所した者にあっては20%台に減少しており,52年に仮出獄した者では,第3年目の54年までに再入所した者の比率は21.5%である。一方,満期釈放で出所した者の出所後第3年までの再入所状況は,35年に出所した者では48.3%が再入所し,40年代ではやや減少してい,るが,52年出所者では49.9%となっている。満期釈放者に比べて仮出獄者の再入所率は,いずれの年度においても著しく低い。

IV-16表 仮出獄者と満期釈放者の再入所状況