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 昭和55年版 犯罪白書 第2編/第4章/第2節/2 

2 保護観察における処遇

(1) 概  況
 保護観察は,保護観察に付されている者に,遵守事項を守るように指導監督し,その者に本来自助の責任があることを認めてこれを補導援護することによって,その改善更生を図ろうとするものである。その処遇は,原則として,保護観察官及び保護司の協働によってなされている。保護観察官は,保護観察開始当初において本人に面接し,保護観察の趣旨を理解させ,遵守事項を説示し,必要な助言を与えるとともに,面接終了後,その者の個別の問題点及び改善のための処遇計画を作成し,これを保護司に送付する。本人に対する直接的な指導,援助は,処遇計画にそって保護司によってなされる場合が多いが,保護観察官は,保護司から定期的,又は随時提出される処遇経過報告を検討し,新たな問題の生じた場合はその都度,又は随時,保護司と協議し,必要に応じて,本人を呼び出し,あるいは直接赴いて必要な措置をとることとされている。保護観察における処遇は,このように保護観察官と保護司の協働によってなされるが,合理的な協働作業によって保護観察官の専門性を効率的に活用するため,あらかじめ保護観察対象者を分類して処遇する分類処遇制度及び保護観察官の定期駐在制度が採用されている。
 分類処遇は,交通事件等の一部の者を除く保護観察対象者について,生活・犯罪歴,素質,環境等の面から処遇の難易に応じてA,Bの二段階に分類し,処遇困難を予想されるA分類の者に対しては,保護観察官による計画的,積極的な処遇が行われる。
 昭和54年12月31日現在,A及びBに分類された保護観察対象者の人員は,II-62表のとおりである。Aに分類された者の割合は,総数でほ8.5%であるが,少年院仮退院者の場合は30.9%と著しく高い。仮出獄者においては,8.8%と低いが,仮出獄者には保護観察期間の短い者が多く,かつ,保護観察期間の2月未満の者は原則としてBに分類するとされていることによるものと思われる。
 定期駐在は,あらかじめ定めた場所に保護観察官が定期的に出張し,保護観察対象者・家族らの関係者との面接,保護司との連絡協議等を効率的に実施しようとするものである。昭和54年には,II-63表に見るとおり,全国で5,732回の定期駐在が実施され,1回当たり平均8.2人に面接して,指導や助言が行われている。

II-62表 保護観察事件種類別分類状況

II-63表 保護観察官の定期駐在実施状況

(2) 援助の措置
 保護観察に付されている者には,疾病,又は適当な住居や職業がないため困窮している者が少なくない。そのような場合,公共の衛生福祉等の機関から必要な援助を受けることについて助言指導がなされているが,その援助が直ちに受けられない場合,又はその援助のみによっては更生できないと認められる場合は,保護観察所において,応急の措置として,自ら医療の援助,食事の給与,衣料の給与,帰住旅費の支給等がなされるほか,更生保護会の施設等に宿泊保護の委託がなされている。昭和54年に行われた援助の措置の実施状況は,II-64表に見るとおりである。医療の援助を受けた総数は41人であるが,保護観察の種類別では,仮出獄者の29人が最も多い。作業着等の衣料の受給総数は691人であるが,やはり仮出獄者の558人が最も多い。食事受給,旅費受給においては,保護観察付執行猶予者の124人,90人が最も多いが,更生保護会の施設等に宿泊保護を委託された人員は,仮出獄者の3,911人が最も多く,総数で4,700人となっている。

II-64表援助措置の実施人員

(3) 成績不良者に対する措置
 保護観察に付されている者が,指導監督に服さず,更生意欲に欠け,行状が不安定であるような場合,保護観察所に呼び出して事情を聴取し,助言,説示を与えるなどの措置をとり,また,一定の住居に居住しない場合,遵守事項に違反したことを疑うに足りる十分な理由があって呼出しに応じないなどの場合には,引致を行い,更に必要に応じて,一定の期間所定の施設に留置する措置がとられる。昭和54年において,引致された者は169人,留置された者は94人である。
 保護観察に付されている者が,保護観察の期間中守るべき遵守事項に違反した場合,あるいは再犯に陥った場合などには,これに対する措置(以下「不良措置」という。)がとられる。不良措置は,保護観察対象者の種類によって異なり,保護観察処分少年については,新たな処分を期待して家庭裁判所に通告する措置があり,少年院仮退院者については,少年院に再収容する戻し収容の措置があり,仮出獄者については,所在が明らかになるまで刑期の進行を止める保護観察の停止の措置及び施設に再収容する仮出獄の取消しの措置があり,保護観察付執行猶予者については,施設に収容して刑を執行する執行猶予の取消しの措置がある。
 II-65表は,昭和54年に不良措置(家庭裁判所への通告を除く。)を受けた人員を前年と比較して示したものである。少年院仮退院者で少年院に戻し収容された者18人,仮出獄者で保護観察を停止された者819人,仮出獄を取り消された者745人,保護観察付執行猶予者で遵守事項違反によって執行猶予を取り消された者113人で,前年に比べて,執行猶予の取消しを除いて,いずれも若干減少している。

II-65表 保護観察における不良措置の実施人員

(4) 成績良好者に対する措置
 保護観察の結果,行状が安定し,更生意欲が強く,再犯のおそれがないと認められる者に対しては,保護観察の期間中であっても,保護観察を中止し,又は終了する措置(以下「良好措置」という。)がとられる。良好措置も不良措置と同様に,保護観察対象者の種類によって異なり,保護観察処分少年については,保護観察を終了する解除又は保護観察を一時停止する良好停止があり,少年院仮退院者については,仮退院期間を短縮して終了する退院があり,刑の短期を経過した不定期刑仮出獄者については,仮出獄期間を短縮して終了する不定期刑終了があり,保護観察付執行猶予者については,保護観察を仮に解除する仮解除がある。
 II-66表は,昭和54年に良好措置(良好停止を除く。)を受けた人員を前年と比較して示したものである。54年において,解除の措置を受けた保護観察処分少年の合計は4万72人,退院の措置を受けた少年院仮退院者の合計は481人,不定期刑終了の措置を受けた仮出獄者は7人,仮解除の措置を受けた保護観察付執行猶予者は1,704人で,不定期刑終了を除いて,いずれも前年より増加している。ただし,保護観察処分少年及び少年院仮退院者のうち,交通事件の保護観察処分少年の解除及び長期処遇少年院仮退院者の退院については,減少が見られる。

II-66表 保護観察における良好措置の実施人員