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1 概 説 昭和54年における特別法犯の検察庁新規受理人員(検察庁間の移送,家庭裁判所からの送致及び再起の人員を含まない。)を罪名別に見ると,I-18表のとおりである。54年の新規受理人員総数は213万3,706人であるが,道交違反の194万4,056人(構成比91.1%)を除くと,18万9,650人である。これを前年と比較すると,総数では31万8,613人(13.0%)減少しているが,道交違反を除く特別法犯では4万5,488人(31.6%)増加している。総数で大幅に減少したのは,道交違反が36万4,101人滅少したためである。通交違反を除く特別法犯が増加した主たる理由は,公職選挙法違反の増加によるものである。
I-19表は,最近5年間における保安関係の特別法犯の動向を見たものである。銃刀法違反及び火薬類取締法違反は一貫して減少を続けているが,減少傾向にあった軽犯罪法違反は,昭和54年にはやや増加し,酒酔い迷惑防止法違反は,52年まで増加傾向にあったが,53年,54年と続けて減少している。 I-18表 特別法犯の検察庁新規受理人員 I-19表 保安関係特別法犯の検察庁新規受理人員 I-20表 財政経済関係特別法犯の検察庁新規受理人員 I-20表は,最近5年間における財政経済関係の特別法犯の動向を見たものである。いずれも,ここ数年間増減を繰り返しているが,昭和54年においては,所得税法違反,法人税法違反,出資の受入等取締法違反が前年よりいずれも減少し,関税法違反及び宅地建物取引業法違反が前年より増加している。ここで,所得税法違反及び法人税法違反について,最近5年間の法人・個人別処理人員を見ると,I-21表のとおりである。所得税法違反は,性質上個人がほとんどを占めるが,法人税法違反では,5割弱が法人によって占められており,企業犯罪としての性格が強いことを示している。 I-21表 所得税法違反及び法人税法違反事件の法人・個人別処理状況 (昭和50年〜54年) 国税庁の資料により,昭和54年4月から55年3月までの1年間における告発件数,脱漏所得額,脱税額等を示したのが,I-22表である。所得税法違反及び法人税法違反の総計を見ると,告発件数は162件(前年度より9件増),脱漏所得総額は282億1,600万円(33億6,000万円増),脱税額は175億300万円(29億6,200万円増)となっており,そのうち所得税法違反は,告発件数69件,脱漏所得額112億9,900万円,脱税額83億2,000万円であり,法人税法違反は,告発件数93件,脱漏所得額169億1,700万円,脱税額91億8,300万円である。1件当たりの脱漏所得額,脱税額を見ると,総数では,それぞれ,1億7,400万円,1億800万円,所得税法違反では,それぞれ,1億6,400万円,1億2,100万円,法人税法違反では,それぞれ,1億8,200万円,9,900万円となっており,所得税法違反の脱税額が高くなっている。I-22表 所得税法違反及び法人税法違反の告発件数・脱漏所得額・脱税額 (昭和54年度) 所得税法違反及び法人税法違反を合わせ,脱税した業種を見ると,製造業29件,医療業25件,小売業及び建設業が各18件となっている。次に,脱税の手口について見ると,製造業及び建設業では,架空原価の計上によるものが主体となっており,小売業及び医療業では,売上等の収入除外が主体となっている。脱税によって得た不法利益の隠匿方法について見ると,その大半は預・貯金,有価証券,不動産等であるが,特異なものとしては,大量の銀地金に換えていたもの,広大な庭園,高額な盆栽に換えていたものなどがある。 I-23表は,最近5年間における風俗関係の特別法犯の動向を見たものである。売春防止法違反は一貫して減少し,風俗営業等取締法違反は一貫して増加している。昭和54年においては,ここ数年減少を続けていた職業安定法違反が125人(55.8%)と大幅な増加を示している。 I-23表 風俗関係特別法犯の検察庁新規受理人員 |