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 昭和54年版 犯罪白書 第4編/第4章/第2節/1 

第2節 女性犯罪者の処遇

1 検察及び裁判

 昭和53年において全国の検察庁で処理された女性被疑者(ただし,自動車等による業過及び道交違反を除く。)は,6万8,182人である。これを罪名別・処理別に見ると,IV-39表のとおりで,全体の処理区分では,家庭裁判所送致が88.8%と最も多く,次いで起訴猶予が33.4%となっている。また,これを刑法犯及び特別法犯に分けて見てみると,刑法犯では,家庭裁判所送致が50.4%であるのに対し,特別法犯では,起訴が60.8%となっている。また,処理総数を罪名別に見ると,窃盗が最も多く,総数の約6割を占めている。窃盗に対する処理は,家庭裁判所送致が59.0%と多く,起訴されたのは,4.4%にすぎない。
 ところで,家庭裁判所送致は,対象被疑者が少年である場合に一律に行われる処分であって特殊なものであるので,これらを除外して女性被疑者(成人)に対する起訴猶予率を算出し,なお,参考のため,男性被疑者に対する起訴猶予率とも対比させて,前記IV-39表右端にこれを掲載した。これによると,検察庁の女性被疑者に対する処理では起訴猶予になる者が多く,女性刑法犯の平均起訴猶予率は76.5%で,男性刑法犯の平均起訴猶予率31.1%の2倍以上となっている。女性刑法犯の起訴猶予率を男性のそれと対比しながら罪名別に見ると,女性の起訴猶予率の高い罪名は,窃盗(89.0%),横領(77.0%),自殺関与(75.0%),恐喝(64.7%)等であるが,男性の起訴猶予率が女性のそれを上回るのは,公然わいせつ(わいせつ文書頒布等を含む。)のみである。一方,女性の特別法犯の起訴猶予率(全体で31.9%)は,刑法犯に比べ全体的に低く,最も高い売春防止法違反でも36.0%である。
 次に,昭和51年及び52年の通常第一審女性有罪人員を罪名別に示すと,IV-40表のとおりである。52年の女性有罪人員は,前年に比べ330人(前年比10.0%)増加している。これは,主として特別法犯の増加によるものであり,特に覚せい剤取締法違反による増加が322人となっている。

IV-39表 女性被疑者の罪名別検察庁処理人員(昭和53年)

IV-40表 罪名別通常第一審女性有罪人員(昭和51年,52年)

 昭和52年における女性有罪人員の罪名別構成を見ると,覚せい剤取締法違反が29.3%で最も多く,窃盗の22.6%がこれに次ぎ,この二つで5割以上を占めている。また,刑法犯と特別法犯との割合は,それぞれ52.8%と47.2%で,大きな差は見られない。これに対し,男性有罪人員の罪名別構成を見ると,刑法犯が約70%を占め,覚せい剤取締法違反は10.9%と低く,女性における覚せい剤取締法違反の占める割合の大きいことが目立っている。