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 昭和54年版 犯罪白書 第4編/第3章/第1節/2 

2 精神障害のある犯罪者の取扱い

  (1)心神喪失・心神耗弱者
 精神障害のために行為の善悪について弁別のできない者,又は弁別はできてもそれに基づいた行為のできない者は,心神喪失者として,刑罰を受けることがない。また,このような弁別又は行為をすることが著しく困難な者は,心神耗弱者として刑を減軽される。
 IV-25表は,検察の段階で心神喪失とされて不起訴となった者及び裁判の段階で心神喪失又は心神耗弱とされて無罪又は刑の減軽をされた者の数を,最近5年間について見たものである。

IV-24表 刑法犯検挙人員中精神障害者の罪名別人員・比率(昭和53年)

 次に,検察・裁判の段階で心神喪失又は心神耗弱とされた被疑者・被告人の罪名別精神診断結果を見るため,昭和58年に全国の地方(区)検察庁で処理された事件及びそれに対応する裁判所で判決のあった事件で,心神喪失により不起訴若しくは無罪となり,又は心神耗弱により刑の減軽を受けた者について,法務省刑事局の調査によって,52年と対比させて見たのが,IV-26表である。53年において,心神喪失又は心神耗弱とされた者は599人で,前年(594人)とほぼ同数である。精神診断別では,精神分裂病が308人(51.4%)と過半数を占めており,罪名別では,殺人の188人(31.4%)が最も多く,放火の126人(21.0%)がこれに次いでいる。

IV-25表 心神喪失・心神耗弱者の人員(昭和49年〜53年)

  (2)精神衛生法による取扱い
 精神衛生法(23条ないし26条)は,精神障害者又はその疑いのある者を知った場合の都道府県知事への申請並びに警察官,検察官,保護観察所長及び矯正施設長の都道府県知事への通報について規定している。申請又は通報を受けた都道府県知事は,その者が精神障害者であり,かつ,医療及び保護のために入院させなければ,その精神障害のために,自身を傷つけ,又は他人に害を及ぼすおそれのあることが二人以上の精神衛生鑑定医により一致して認められた場合には,精神病院にいわゆる措置入院させることができる。IV-27表は,最近5年間における精神衛生法による前記申請・通報件数及び措置入院患者数を示したものであるが,いずれも近年,おおむね減少傾向を示している。警察・検察・矯正及び保護の各機関からの昭和53年の通報件数は,5,815件である。そのうち,3,849人が精神障害者と認定され,その53.7%にあたる2,067人が知事による入院措置をとられている。

IV-26表 心神喪失・心神耗弱者の罪名別精神診断結果(昭和52年,53年)

IV-27表 精神障害者鑑定申請・通報状況(昭和49年〜53年)