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 昭和54年版 犯罪白書 第4編/第2章/第1節/2 

2 暴力団関係者の検挙状況

 IV-11表は,最近5年間における暴力団関係者(準構成員及び暴力常習者を含む。)の過失犯を除く刑法犯の検挙人員及びその全検挙人員中に占める比率を罪名別に示したものである。暴力団関係者の検挙人員数は逐年減少を続け,昭和53年には3万7,201人となっている。罪名別に見ると,放火及び器物損壊が一貫して増加しており,また,53年には,強盗,恐喝,窃盗及び賭博がいずれも前年より増加しているが,その他の犯罪は,すべて,53年には前年より減少している。全検挙人員中に占める暴力団関係者の比率は,総数では減少を続け,53年には10%を割って9.7%となったが,罪名別比率では,傷害,暴行,恐喝が一貫して上昇を続けており,脅迫及び強盗もおおむね上昇傾向を示している。53年の罪名別比率では,賭博が55.9%と最も高く,脅迫(52.8%),恐喝(50.9%)がこれに次ぎ,窃盗(1.0%)が最も低い。

IV-11表 暴力団関係者の刑法犯罪名別検挙人員及び全検挙人員中に占める比率(昭和49年〜53年)

 なお,昭和53年における暴力団関係者の都道府県別・罪名別検挙人員を見ると,殺人では,東京(75人),大阪(69人),神奈川(37人),福岡(36人)及び愛知(24人)の5都府県で全体の48.7%を占め,賭博では,東京(2,143人),神奈川(956人),大阪(802人),兵庫(341人)及び愛知(159人)の5都府県で全体の74.3%を占めている。
 次に,暴力団関係者の道交違反を除く特別法犯の検挙人員及びその全検挙人員中に占める比率について同様に示すと,IV-12表のとおりである。ただし,特別法犯については,罪名別の全検挙人員の統計がないので,これに相当する全送致人員(検挙した被疑者を検察庁又は家庭裁判所に送致した人員)によって比率を算出した。暴力団関係者の検挙人員総数は,逐年増加して,昭和53年には49年より59%増の2万1,549人となり,刑法犯を併せた53年の検挙人員総数も,49年より10%増の5万8,750人となっている。罪名別の検挙人員を見ると,覚せい剤取締法違反の増加が著しく,53年は49年のおよそ2倍半になっており,なお,実数は少ないものの,風俗営業等取締法違反及び児童福祉法違反は,近年増加を続けている。
 昭和53年の全検挙人員中に占める暴力団関係者の比率は,総数では15.9%となっているが,罪名別では,競馬法違反の59.6%が最も高く,自転車競技法違反(55.3%),覚せい剤取締法違反(52.1%)がこれに続いており,風俗営業等取締法違反(5.0%)が最も低い。49年以降における同比率の推移を見ると,競馬法違反の増加が顕著である。覚せい剤取締法違反について同様に推移を見ると,検挙人員の増加に反して同比率は下降を続けているが,これは,覚せい剤が一般社会に浸透したため,暴力団関係者以外の者の検挙人員が,暴力団関係者を上回る割合で逐年増加していることを示すものであろう。

IV-12表 暴力団関係者の特別法犯罪名別検挙人員及び全検挙人員中に占める比率(昭和49年〜53年)

 また,昭和53年における暴力団関係者の道交違反を除く特別法犯の検挙人員を都道府県別・罪名別に見ると,覚せい剤取締法違反では,東京(2,317人),大阪(1,014人),北海道(894人),神奈川(480人)及び静岡(367人)の5都道府県で全体の54.9%を占め,競馬法違反では,神奈川(1,329人),東京(1,027人),兵庫(657人),大阪(560人)及び愛知(306人)の5都府県で全体の89.2%を占めている。

IV-13表 暴力団関係者刑法犯検挙人員の罪名別逮捕歴・前科の有無等の比率(昭和53年)