第3節 大麻事犯 大麻取締法違反による検察庁新規受理人員は,かつて数十人ないし二・三百人程度にとどまり,しかも,その多くは,繊維をとるための麻の栽培にかかわる形式的な手続規定違反であったが,昭和40年代に入り,受理人員は漸増を続け,51年には1,000人を超え,53年には1,658人となり,内容的に見ても,吸引目的の大麻の所持,譲渡,譲受等の実質事犯が多くを占めるようになった。しかも,違反者も,当初は,米軍関係者や基地周辺の者に集中していたが,最近では,芸能人やいわゆるヒッピー族などから,更に広範囲の青年層,一般市民層にまで広がりつつある。特に,その吸引による幻覚作用は,社会の一部にうかがわれる逃避的・享楽的傾向とも結びついて事犯増大の原因になっているとも考えられ,その今後の動向には注意を要するものがある。 なお,近時のその他の薬物事犯としては,シンナー・トルエン等の有機溶剤濫用事犯(毒物及び劇物取締法違反)の大量発生現象があり,注目を要するが,これは主として少年によって犯されており,少年非行の一として述べられているので,ここではこれ以上は論じない。
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