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10 不服申立制度 収容者からの苦情の発生は,拘禁環境下では,その処遇がいかに適正に行われても,不可避のものと言える。発生した苦情を法令に基づき適切に処理することは,行刑施設運営上重要な事項の一つである。
現行の苦情処理制度としては,法務大臣又は巡閲官(法務大臣の命を受けて行刑施設に対する実地監査を行う法務省の職員)に対する情願があるほか,行刑施設の長に対する面接(所長面接)がある。情願は,収容者が施設の処置に対して不服があるとき行うもので,大臣に対しては書面で,巡閲官に対しては,書面又は口頭で行われるが,いずれも秘密の申出が保障されている。 情願の法的性格は,請願の一種とされ,申出に対する応答義務はないものと解されているが,行刑の実際においては,十分な調査を行い,申立人に対し結果を通知するなど誠実な処理が行われている。 また,所長面接も,代理者による実施を含め,活発に運用されている。 このように収容者からの不服申立てを受理し,救済をはかるものとしては,情願のほかに,行政訴訟,告訴・告発,人権侵犯申告等の一般的な制度がある。 II-49表は,昭和45年以降における収容者のこれらの不服申立件数を見たものである。近年,収容者の側からの不服申立てが増加してきていることがわかる。このことは,収容者の人権意識の増大,不服申立てへの直さいな手続の保障等の結果によるものであり,現代社会の人権尊重の思潮の反映と解することができよう。II-2図は,53年中の情願を除く収容者の不服申立てを事項別に見たものである。その他の項目を除いて,不服申立ての多い事項,は,職員関係(職員の言動に関するもの),外部交通(面会,通信に関するもの)及び保安・懲罰の順となっている。自由を制限される施設内の人間関係を基調とする苦情・不服が多いということは,対人的な関係を基盤とする施設内処遇の困難性を物語るものであろう。 II-49表 収容者の不服申立件数(昭和45年〜53年) II-2図 事項別不服申立件数 |