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2 少年の保護観察 ここでは,保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対する保護観察について述べる。
(1) 概 況 昭和52年に全国の保護観察所で受理した保護観察処分少年の総数は,3万3,735人で,前年に比べて9,754人増加している。もっとも,この受理総数のうちには,52年4月から開始された交通短期保護観察に付された者1万2,471人が含まれ,これを除くと,前年より2,717人の減少である。次に,52年に全国の保護観察所が受理した少年院仮退院者の総数は2,763人で,前年より692人増加している。 ここで,非行の種類を,業務上(重)過失致死傷及び道路交通法違反(以下「交通犯罪」という。),業務上(重)過失致死傷を除く刑法犯,道路交通法違反を除く特別法犯及び虞犯に大別して,最近5年間の保護観察処分少年と少年院仮退院者の受理人員の推移を見ると,IV-74表のとおりである。保護観察処分少年においては,業務上(重)過失致死傷を除く刑法犯の者が横ばいないし減少傾向にあるが,他はいずれも増加しており,特に,道路交通法違反を除く特別法犯の者の増加が顕著であり,交通犯罪の者の増加がこれに次ぐ。少年院仮退院者においても類似の傾向が見いだされ,道路交通法違反を除く特別法犯の者の増加が最も顕著であり,交通犯罪の者の増加がこれに次いでいる。 保護観察対象者のうち,暴力組織加入者,暴走族成員,シンナー等の濫用者及び精神障害者についての法務省保護局の最近の調査結果を見ると,IV-75表に示すとおりであり,保護観察処分少年においては,昭和51年8月末から53年6月末までの間に,暴力組織加入者と精神障害者との人員にわずかずつの減少が見られ,一方,暴走族成員の人員には漸増の傾向が,また,シンナー等濫用者の人員にはかなりの増加が見られる。少年院仮退院者について見ると,暴力組織加入者の人員は,若干の起伏はあるもののほぼ横ばいであるが,精神障害者の人員には漸減,暴走族成員の人員には漸増,また,シンナー等濫用者の人員にはかなりの増加が見られる。保護観察中の者の全体から見ると,シンナー等濫用者以外の三者は,いずれもその比率は小さいが,シンナー等濫用者においては,保護観察処分少年9人に1人,少年院仮退院者7人に1人の割合を占め,数の上でもシンナー等の濫用は大きな問題であると言える。 IV-74表 非行の種類別受理人員(昭和48年〜52年) IV-75表 非行の態様別保護観察対象者(昭和51年8月,52年4月,53年6月) 最近5年間に保護観察を終了した保護観察処分少年(交通短期保護観察の終了者を除く。)及び少年院仮退院者についての本件処分以前の保護処分歴の有無とその種類別の分布は,IV-76表及びIV-77表に示すとおりである。保護観察処分少年においては,保護処分歴のある者の比率は,毎年10%に満たないが,過去に保護観察処分に付された者の割合が徐々に増加している。 少年院仮退院者においては,保護処分歴のある者が毎年60%以上を占めているが,やはり,保護観察処分歴のある者が漸増している。 IV-76表 保護観察を終了した保護観察処分少年の保護処分歴別構成比(昭和48年〜52年) IV-77表 保護観察を終了した少年院仮退院者の保護処分歴別構成比(昭和48年〜52年) (2) 保護観察の終了事由等昭和48年以降最近5年間に保護観察を終了した保護観察処分少年(交通短期保護観察の終了者を除く。)と少年院仮退院者とについて,保護観察の終了事由と保護観察成績を見ると,IV-78表及びIV-79表のとおりである。保護観察処分少年については,満期又は満齢に達する以前に,社会の順良な一員として更生したと認められ,保護観察を解除される者の割合が逐年増加し,保護観察の成績が普通又は不良の状態で保護観察期間を終了している者の割合が逐年減少している。これと類似の傾向は,少年院仮退院者についても見られ,満期又は満齢に至らない段階で,社会の順良な一員として更生したと認められて退院許可決定により,早期に保護観察を終了した者の比率が,やはり逐年増加している。また,満期・満齢による保護観察終了時の成績が不良である者の割合も減少しつつある。その反面,少年院仮退院者の場合,再非行等により保護処分を取り消された者の比率が徐々に増加していることは,注目を要する。 IV-78表 保護観察処分少年の終了事由別・成績別構成比(昭和48年〜52年) IV-79表 少年院仮退院者の終了事由別・成績別構成比(昭和48年〜52年) これらの二表に掲げるもののうち,特に,昭和52年の保護観察終了者について,保護処分歴の有無,種類別に保護観察終了事由,終了時の成績を見ると,IV-80表及びIV-81表に示すとおりである。保護観察処分少年において,解除による終了者の割合が最も高く,保護処分取消しによる終了者の割合が最も低いのは,保護処分歴のない者である。その反対なのは,少年院歴のある者及び教護院又は養護施設歴のある者で,いずれも,解除による終了者の割合が低く,保護処分取消しによる終了者の割合が高い。この意味で,保護処分歴のない者は,概して改善容易であり,少年院歴のある者及び教護院又は養護施設歴のある者は,概して改善困難と言えよう。少年院仮退院者の場合は,保護観察処分少年の場合ほど規則的な人員分布を示していないが,少年院歴のある者及び教護院又は養護施設歴のある者において,保護処分取消しによる終了者の割合と,成績不良の状態で満期又は満齢に至った者の割合とが著しく高い。やはり,この二者は,概して改善が容易でないと言える。保護処分歴のない者と保護観察歴のある者とでは,退院許可による終了者の割合は前者に多いが,同時に,保護処分取消しによる終了者の割合も,成績不良で満期又は満齢に至った者の割合も,前者に多い。したがって,どちらが改善容易であるとも言い難い。IV-80表 保護観察処分少年の保護処分歴別保護観察終了事由等(昭和52年) IV-81表 少年院仮退院者の保護処分歴別保護観察終了事由等(昭和52年) (3) 交通事件の保護観察保護観察は,保護観察対象者についての個別処遇を原則としているが,交通犯罪で保護観察に付された者に対しては,個別処遇に併せて,交通に関する講習会や座談会等の集団処遇が各保護観察所において実施されている。特に,保護観察処分少年の場合,保護観察は概して成功していると言える。最近5年間の保護観察終了者について,終了事由を見ると,IV-82表のとおり,解除による終了者の割合が逐年増加している。また,過去5年間に保護観察を解除された道路交通法違反の者について,解除されるまでの保護観察の期間を見ると,IV-83表のとおりであって,6月以内とか,1年以内という比較的短期間の処遇で,保護観察を解除される者の割合が,特に最近増加している。このような実績を踏まえて,法務省と最高裁判所家庭局との品で協議がなされ,昭和52年4月から交通短期保護観察が実施されることになった。これは,交通事件で保護観察処分の決定を受けた少年のうち,短期間の保護観察が相当である旨の家庭裁判所の処遇勧告のあったものについては,保護観察所は,原則として個別処遇を実施せず,講義,集団討議等を中心とした集団処遇の集中的実施によって,遵法精神のかん養,安全運転に関する知識の向上,安全運転態度の形成を図るもので, 3,4箇月で保護観察を解除させることを目途としている。52年4月から同年末までのこの種の事件の受理・処理の概況は,IV-84表に示すとおりである。また,解除された者について,解除までの期間別に人員の分布を見ると,IV-85表のとおりである。 IV-82表 交通事件の保護観察処分少年の終了事由(昭和48年〜52年) IV-83表 道路交通法違反の保護観察処分少年の解除までの期間別構成比(昭和48年〜52年) IV-84表 交通短期保護観察事件受理・処理状況(昭和52年4月〜12月) IV-85表 解除された交通短期保護観察処分少年の解除までの期間別人員(昭和52年4月〜12月) なお,一部少年院において実施されてきた交通事犯者に対する短期処遇について,昭和52年6月から,その処遇のあり方,仮退院の事務手続等が全国的に統一されることとなった。52年6月以降同年末までに交通事犯者の短期処遇を実施する少年院から仮退院で出院した者は,110人である。この種の少年院仮退院者に対しては,個別処遇と集団処遇とを併せて実施し,数箇月程度で退院による保護観察終了にすることが図られている。 |