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 昭和53年版 犯罪白書 第3編/第3章/第2節/2 

2 刑事処分歴と生活状況

 昭和52年に保護観察を終了した仮出獄者と保護観察付執行猶予者とについて,刑事処分歴と終了時の職業,生計,配偶関係及び居住状況との関係を見ると,III-45表及びIII-46表のとおりである。まず,仮出獄者について職業の面を見ると,失職者等の占める割合が最も高いのは,各種の処分歴のうち懲役の実刑歴のある者で,その割合は20.4%であるが,このうち,特に刑務所入所度数4度以上のものについて見ると,この割合は21.9%と高くなっている。実刑歴のある者に次ぐのは,懲役の執行猶予歴のある者の16.6%で,その他の処分歴のある者は,いずれも10%をわずかに超える程度である。有職者のうち,比較的不安定な職種である単純労働に従事するものの割合を見ると,処分歴の種類としては,懲役の実刑歴のある者の28.3%が最も高いが,とりわけ入所度数4度以上の者においては,単純労働者の割合が35.5%と更に高くなっている。懲役の執行猶予歴のある者の19.3%,起訴猶予歴のある者の19.2%がこれに次ぎ,刑事処分歴の全くない者の13.1%が最も低い。

III-44表 保護観察終了者の刑事処分歴別人員累年比較(昭和48年〜52年)

III-45表 仮出獄者の刑事処分歴と保護観察終了時の生活状況(昭和52年)

III-46表 保護観察付執行猶予者の刑事処分歴と保護観察終了時の生活状況               (昭和52年)

 生計を,富裕,普通,貧困(生活保護受給中を含む。)の3段階に分け,貧困者の占める割合を見ると,懲役の実刑歴のある者の37.7%,とりわけ入所度数4度以上の者の49.1%が最も高く,以下,懲役の執行猶予歴のある者の21.4%,起訴猶予歴のある者の19.2%の順となり,罰金刑歴のある者と刑事処分歴のない者では,10%をわずかに超える程度である。
 配偶関係について,配偶者と離別又は死別している者の割合を見ると,この割合の最も高いのは懲役の実刑歴のある者で,その割合は22.5%であり,特に入所度数4度以上の者では,27.1%と更に高くなっている。以下,起訴猶予歴のある者の19.2%,懲役の執行猶予歴のある者の17.2%の順であり,罰金刑歴のある者と刑事処分歴のない者とにおいては,その割合は10%をわずかに超える程度である。
 居住状況について,親族と同居する者の割合の最も低いのは懲役の実刑歴のある者で,その割合は50.2%である。特に,入所度数4度以上の者に限って見ると,その割合は,37.7%と更に低くなっている。これに次ぐのは,起訴猶予歴のある者の53.8%であり,他の三者は,いずれも70%以上である。
 以上,仮出獄者について,社会的に不利ないし不安定な立場にある者の最も多いのは,懲役の実刑歴のある者,とりわけ入所度数の多い者であり,懲役の執行猶予歴のある者及び起訴猶予歴のある者がこれに次いでいると言えよう。
 保護観察付執行猶予者については,仮出獄者とはやや異なり,懲役の実刑歴のある者と起訴猶予歴のある者に,社会的に条件の悪い者が最も多く見られ,懲役の執行猶予歴のある者がこの二者に次いでいる。すなわち,失職者等の占める割合では,起訴猶予歴のある者の22.7%が最も高く,以下,懲役の実刑歴のある者の19.9%,同じく執行猶予歴のある者の15.3%の順となっている。単純労働者の占める割合では,懲役の実刑歴のある者の15.6%だけが高く,他は,いずれも10%前後の割合を示している。生計の面で,貧困者の占める割合は,懲役の実刑歴のある者の26.8%が最高であるが,起訴猶予歴のある者は,これとほぼ等しい26.4%という数値を示している。懲役の執行猶予歴のある者が,それに次ぐが,その割合は16.0%であって,前二者とはかなりの差がある。配偶者との離死別の者の割合を見ると,起訴猶予歴のある者の19.6%が最も高く,懲役の実刑歴のある者の18.2%がこれに次いでいる。懲役の執行猶予歴のある者がそれに次いでいるが,その割合は10.4%で,かなり低い。居住状況において,親族と同居している者の割合も,起訴猶予歴のある者が56.4%という最低の割合を示し,その上が懲役の実刑歴のある者の68.5%,更に懲役の執行猶予歴のある者であるが,その割合は73.8%で,処分歴のない者の76.3%,罰金刑歴の者の79.9%と大差はない。
 このように,仮出獄者と保護観察付執行猶予者とでは,やや趣きが異なっているが,両者を総合すると,社会的に不利な立場にあり,それだけに保護観察の処遇の容易でない者は,懲役の実刑歴のある者,とりわけ入所度数の多い者に多く見られるが,同時に,懲役の執行猶予歴のある者,起訴猶予歴のある者についても,決して処遇が容易であるとは言えないのである。