前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和52年版 犯罪白書 第3編/第3章/第2節/2 

2 女性犯罪の特徴

 女性犯罪を主要犯罪ないし刑法犯に限定して,アメリカ,西ドイツ及び我が国におけるその質的構成を見ることとする。
 まず,アメリカについて見ると,前掲III-96表のとおり,例年,女性逮捕人員の約8割は窃盗によるものである。すなわち,1970年の女性逮捕人員21万5,614人のうち,17万2,197人(79.9%)は窃盗であり,窃盗による逮捕人員総数中の女性比は27.9%であった。この窃盗による女性逮捕人員は,逐年増加し,1975年には29万9,267人となり,構成比は80%を超え,女性比も31.2%となっている。また,不法侵入及び自動車盗による女性逮捕人員も,1970年から1975年までの間にそれぞれ1.83倍及び1.29倍に増加している。不法侵入の多くは,窃盗目的による侵入であることを考慮すると,女性の窃盗の増加には著しいものがあると言わなければならないであろう。また,アメリカの女性逮捕人員総数は,1970年から1975年までの間に,15万5,097人増加しているが,窃盗による女性逮捕人員は12万7,070人の増加であって,増加人員の81.9%に相当している。この窃盗の増加人員に,更に不法侵入及び自動車盗の逮捕人員の増加数を加えると,13万9,998人であって,増加人員の90.3%に達している。すなわち,アメリカの女性犯罪の増加は,主として窃盗によるものであると言える。
 西ドイツにおいては,女性検挙人員総数中に占める窃盗の構成比は,1975年では54.9%である。これは,アメリカ及び後述の我が国と比べるとかなり低い。それに対して,西ドイツの場合,女性検挙人員総数中の詐欺の構成比は,1975年で13.5%であり,これは,我が国における詐欺の同様の構成比(2.1%)に比べるとかなり高い。また,西ドイツにおいては,1970年から1975年の間に,女性検挙人員は1万9,412人増加しているが,窃盗の増加人員は8,877人,詐欺の増加人員は5,675人であって,増加人員総数中に占める比率は,窃盗が45.7%,詐欺が29.2%である。
 我が国においても,前述のとおり,女性検挙人員の大多数を占めるものは窃盗であり,1975年では,女性検挙人員の84.2%を占めているが,これは,アメリカよりも高く,西ドイツと比べれば著しく高い構成比である。なお,1970年から1975年までの間に,女性検挙人員は1万3,926人増加しているが,窃盗による女性検挙人員の増加は,この総数を上回る1万4,319人にも達している。詐欺の構成比が西ドイツに比しても低いことは前述したとおりである。
 次に,アメリカにおいては,1970年から1975年までの間に,強盗が1.71倍,加重暴行傷害が1.66倍に増加し,西ドイツにおいても,強盗が1.78倍,傷害が1.15倍に増加しており,このような数的増加と同時に,その女性比がいずれも増大しているのであって,アメリカ,西ドイツにおいては,女性犯罪に質的変化が生じつつあるのではないかとも考えられる。
 我が国の場合,強盗,強盗致死傷は大差はないが,恐喝,暴行,強姦などの従来女性犯罪とは必ずしも考えられなかった罪種での増加が目立つのであって,アメリカ,西ドイツと同様に女性犯罪の暴力的傾向が強まっていると言える。