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1 矯 正 (1) 交通犯罪受刑者の概況
昭和51年における業務上(重)過失致死傷(その大多数は,いわゆる交通犯罪である。)及び道路交通法違反の,新受刑者数は,III-85表のとおりである。前年に比べて,禁錮,懲役共に,業務上(重)過失致死傷が減少し,道路交通法違反が増加し,総数においては,若干の減少となっている。交通犯罪で懲役に処せられた者のうち,道路交通法違反による者の比率は増大傾向にあったが,51年において,業務上(重)過失致死傷による者の比率を超えて52.8%に達したことが注目される。 新受刑者の刑期別人員は,III-86表のとおりで,総数に対する比率で見ると,1年を超える比較的長期のものの比率が,禁錮・懲役共に前年に比べて高くなっている。また,年齢層別人員はIII-87表のとおりで,20歳代の者が半数近くを占め,これに30歳代を加えると,総数の83.3%に達している。次に,これら新受刑者について,その入所歴を見ると,初入者が2,829人で総数の74.2%を占めているが,施設経験を有する者,特に交通犯罪による服役経験のある者の占める率は,年々増加し,昭和51年には交通犯罪新受刑者総数の10%を超えたことが注目される。 III-85表 交通犯罪新受刑者の罪名別・刑種別人員(昭和50年,51年) (2) 交通犯罪受刑者に対する処遇交通犯罪受刑者のうち,禁錮受刑者については,一定の基準を設け,特定の施設に集禁して処遇が行われている。他方,懲役受刑者については,他の懲役受刑者と同様に一般の刑務所において処遇されてきたが,昭和51年11月から,東京矯正管区管内の懲役受刑者について,交通犯罪禁錮受刑者と同様に集禁基準が設けられ,従来禁錮者のみを集禁していた市原刑務所にこれを集禁し,新しい処遇が試行されることになった。 III-86表 交通犯罪新受刑者の刑期別・刑種別人員(昭和50年,51年) これら交通犯罪受刑者の集禁基準は,禁錮・懲役受刑者共に,開放的処遇が適当と判定された成人の交通犯罪受刑者で,[1]交通事犯以外の犯罪による懲役刑を併有しないこと,[2]交通事犯以外の犯罪による受刑歴がないこと,[3]刑期がおおむね3月以上であること,[4]心身に著しい障害がないことの諸条件を満たすものとされている。このための集禁施設としては,市原刑務所,加古川刑務所,豊橋刑務支所,大分刑務所,山形刑務所及び西条刑務支所の従来からの6施設に加えて,尾道刑務支所及び函館少年刑務所の2施設が指定された。集禁施設における処遇は,開放的なふん囲気の中で,生活訓練や職業指導等の矯正教育を行うことに特色がある。特に,生活訓練については,遵法精神,人命尊重,責任観念の養成に重点が置かれ,交通安全意識の養成も配慮されている。また,職業指導については,各人の自動車運転に対する適性,将来の生活設計などを考慮して,職業技能の開発が行われている。職業指導の種目としては,自動車の運転技術に関するもののほか,ガス・アーク等の溶接関係のもの,高圧ガス・ボイラー関係のもの,ガソリン・エンジン等の整備関係のもの,調理関係のものなどが用意され,自動車の運転適性のない者に対しては,転職指導を積極的に行うように配慮されている。 III-87表 交通犯罪新受刑者の年齢層別人員(昭和50年,51年) このような職業指導によって,刑務所入所前は自動車関係の職業に就いていた者が,出所後は自動車関係以外の職業に変わる者も多くなっている。市原刑務所の調査によると,昭和51年に同刑務所に入所した禁錮受刑者で本犯時に自動車関係の職業に就いていた者118人中,出所後の職業予定で自動車関係を選んでいる者は,その半数にも満たない54人である。なお,市原刑務所で試行されている交通犯罪懲役受刑者の集禁処遇は,原則として,従来,交通犯罪禁錮受刑者に対して行われていたものに準じて行われている。両者の間には,居房の分界,作業時間,行刑累進処遇令適用などにおいて処遇上の差異が置かれている。 (3) 少年院における交通事犯少年の処遇 昭和51年中に交通事犯によって新たに少年院に収容された者は,業務上(重)過失致死傷による者60人と道路交通法違反による者68人の計128人である。 交通事犯等で送致された少年を短期間収容し,これに矯正教育を行う少年院として,昭和52年6月1日現在,水府学院,宇治少年院,豊ヶ岡農工学院,美保少年院,佐世保少年院,置賜学院,月形少年院及び松山少年院の計8庁が指定されているが,51年中にこの種の短期処遇を実施する少年院に交通事犯で送致された者は,79人である。 交通事犯で少年院に送致された少年に対しては,明るく開放的なふん囲気の中で,人命尊重と遵法精神のかん養に重点を置き,交通安全教育の徹底を図るとともに,収容少年の性格,心身の発達,将来の進路等を考慮した生活指導が行われている。 |