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 昭和52年版 犯罪白書 第2編/第2章/第4節/1 

1 刑務所人口

 II-53表は,1975年第5回国際連合犯罪防止及び犯罪者処遇会議に際し,国際連合事務局が作成した48箇国の刑務所人口(Census of Prison Popu1ation)の資料を基にして,1人当たりの国民所得2,000ドル(米ドル,1974年)以上の19箇国(スイスは国民所得が2,000ドル以上であるが,原資料に登載がない。)を選び,各大陸州ごとに所得の多い国の順に並べたものである。
 以下,これらの19箇国について,1974年(ただし,資料の入手できなかった場合については,1972年)における刑務所人口(未決拘禁者等受刑者以外の収容者を含む。)を,総人口10万人当たりのそれによって比較を試みる。もとより,この刑務所人口については,各国の法制による差異があり,特に,受刑者だけでなく未決拘禁者等を含む数であることもあって,単純に数を比較して評価することに問題がないわけではないが,国際比較の一応の目安としての意義はあると言えよう。まず,刑務所人口の少ない国としては,オランダ(1972年21人)を首位に,以下,アイルランド(1972年35人),ノルウェー(1974年39人),日本及びスウェーデン(共に1974年で,43人)と続き,最終19位はアメリカ(1972年189人)である。このアメリカの総人口10万人当たりの刑務所人口は,同年次すなわち1972年で見ると,実に,我が国(46人)の4倍強に及んでいる。これをグループ別に分けてみると,50人以下の少ないグループに,上記のオランダ,アイルランド,ノルウェー,日本及びスウェーデン(ただし,1972年では54人)の5箇国が,逆に,100人を超える多いグループには,フィンランド(101人),オーストリア(104人),イスラエル(137人),ベネズエラ(151人)及びアメリカ(189人)の5箇国が属する。この中間(50人を超え100人以下)に,イタリア(51人),フランス(52人),デンマーク(54人),ベルギー(58人),オーストラリア(70人),イギリス(75人),西ドイツ(81人),ニュージーランド(85人)及びカナダ(95人)の9箇国が該当している。

I-53表 刑務所人口の比較(1972年12月1日,1974年1月1日)

 我が国の総人口10万人当たりの刑務所人口43人は,いわゆる経済先進7箇国(日本,アメリカ,カナダ,西ドイツ,フランス,イギリス,イタリア)中,最も少ない数字である。また,1人当たり国民所得が我が国と同等以上(約3,500ドル以上)の国々について見ると,我が国は,スウェーデンとともに,オランダ及びノルウェーに次いで低く,更に,総人口が我が国の1億967万人(1974年)に比較的近い西ドイツ(6,204万人)をはじめ,イギリス(5,597万人),イタリア(5,541万人),フランス(5,251万人)等に比較しても,我が国の刑務所人口は,最も低いと言える。
 このほか,刑務所人口の増減を1972年と1974年との対比で見ると,同表に資料のある13箇国中増加した国には,イスラエル,カナダ及びベネズエラの3箇国が,減少した国には,日本をはじめ,スウェーデン,西ドイツ,デンマーク,ベルギー,フランス,フィンランド,オーストリア,イギリス及びオーストラリアの10箇国がある。
 なお,同表中,収容者総数に占める女子の比率は,アメリカが7.1%(1972年)で最も高く,このほか,オーストリア(1972年5.8%,1974年4.5%),イタリア(1972年5.2%),ニュージーランド(1972年4.5%)等が高率のグループに属し,イスラエル(1972年1.8%,1974年1.4%)が最も低率である。我が国の女子の比率(1972年,1974年共に2.3%)は,イスラエル(前出),オランダ(1972年1.8%)及びフィンランド(1972年2.2%,1974年1.9%)の3箇国に次いで低い。