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 昭和52年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/6 

6 刑務作業

(1) 概  況
 刑務作業の最近の規模を見ると,全国74施設において,1日平均約3万6,300人が就業し,年間約38億円の作業費を使用して,113億余円の収入を上げており,その業種は,木工,印刷,洋裁,金属,革工,畜産等の20余種に及んでいる。その運営は,受刑者に対して,勤労意欲のかん養,職業的技能及び知識の習得,規律ある生活の維持,共同生活への順応,忍耐心の養成等を図ることにより,健全な社会人として復帰させることを目的として行われ,それが同時に,作業生産性の向上につながるように実施されている。
 作業の形態は,その性質・目的から,生産作業,職業訓練及び自営作業の三つに分かれる。II-46表は,主要業種について,その昭和50年度及び51年度の就業延べ人員,支出額及び生産額を見たものである。
 昭和51年度の刑務作業では,長期化した我が国経済の不況下において,契約業者のうち,不況のために解約・減産した件数は200件,約4,000名分の受刑者の作業が失われたが,代替作業の導入に努めた結果,作業収入は,113億2,000万円(対前年比111%)と顕著に上昇している。

II-46表 業種別就業延べ人員,支出額及び生産額(昭和50年度,51年度)

 なお,昭和51年末現在における刑務作業の就業率は,懲役受刑者では92.8%,禁錮受刑者では93.0%,未決拘禁者では1.8%,労役場留置者では90.3%となっている。
(2) 職業訓練
 職業訓練は,受刑者職業訓練規則に基づいて行われるが,特に公の資格・免許を取得させるように努力が払われている。その実施は,総合訓練,集合訓練及び自所訓練の三つの形態で行われている。総合訓練は,全国各施設から適格者を選定し,指定された6箇所の総合職業訓練施設(中野・山口・山形の各刑務所,川越・奈良・函館の各少年刑務所)において,受刑者の職業適性に応じた各種の訓練種目について実施されている。集合訓練及び自所訓練は,それぞれ,各矯正管区及び施設ごとに訓練種目を定めて行っている。

II-47表 職業訓練種目別人員(昭和51年12月3巾現在)

II-48表 労働省職業訓練局長履修証明書受領者数(昭和51年度)

II-49表 資格・免許取得状況(昭和51年度)

 昭和51年度における職業訓練の実施状況及び資格・免許の取得状況は,それぞれ,II-47表II-48表及びII-49表のとおりである。今後の課題は,真に社会復帰に役立つ訓練内容の充実を図ることはもとより,訓練の実施に当たっての訓練種目の統廃合による予算の効率的執行,機械設備の有効な活用及び指導教官の適正配置の実現等にあると言える。
(3) 構外作業
 刑務作業は,各刑務所の構内で行われるばかりではなく,開放的処遇の一環として,構外においても実施されている。この構外作業には,刑務所が管理する構外作業場において行われるもののほか,民間企業の協力を得て,一般事業所において実施されているものがある。大井造船作業場(松山),各務原作業場(岐阜),いずみ寮(和歌山)等が,その例である。
 昭和51年末現在の構外作業場の数は74箇所,出業者は497人(全就業人員の1.4%)で,全体として良好な成績を収めていると言える。
(4) 就業条件
 刑務作業に従事した者には,作業賞与金が支給される。この賞与金は,賃金ではなく恩恵的・奨励的なものである。原則として,釈放時に給与されるが,在所中家族にあてて送金し,又は所内生活で用いる物品の購入に使用することも許されている。物価の上昇等を考慮して,毎年,その増額が図られているが,昭和51年における賞与金計算高の1人当たり平均月額は,1,940円である。
 作業時間は,1日につき8時間(土曜日は4時間),1週につき44時間で,週休制が採られている。その他作業環境や作業の安全衛生管理については,労働基準法や労働安全衛生法等の趣旨によってその整備が図られている。
 なお,受刑者には,一定の条件の下で,いわば内職的な自己労作を行うことも許されている。その収益金は,全額本人の収入となるのであって,昭和51年3月末現在,全国で849人がこの労作に従事し,1人1月平均5,204円の収入を得ている。