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 昭和52年版 犯罪白書 第1編/第2章/第2節/2 

2 最近の事犯の特徴

(1) 事犯の態様

I-58表 罪名別処分内容

I-59表 事件発生の月別状況

 まず,犯行の月及び時刻を見ると,I-59表及びI-60表のとおりである。月別では,4月及び5月並びに7月,8月及び9月が多く,時刻別では午前零時ころから同3時ころまでが最も多く,午後8時ころから午前零時ころまでがこれに次いでいる。
 犯行場所では,I-61表のとおり,被疑者又は被害者宅が,それぞれ,20.0%及び24.3%を占め,これに旅館・モーテル等(20.0%)を加えると64.3%に達し,強姦事犯の大半は屋内で起こっていることがわかる。残余については,自動車内や道路等屋外を犯行場所とするものが,大部分である。また,犯行態様については,単独犯が268人(65.2%)で最も多く,次いで,輪姦,輪姦以外の共犯の順となっている。犯行態様と犯行場所の関係を見ると,単独犯では,被害者宅を犯行場所とするものが最も多くて35.8%を占め,輪姦では,自動車内が40.6%で最も高い割合を占めている。

I-60表 事件発生の時刻別状況

 犯行の計画性と犯行場所との関係を示すと,I-62表のとおりである。強姦事件の約80%は計画性があるが,呼び出し,連れ出し,連れ込み等によるものは,被疑者宅,旅館・モーテル等の屋内,自動車内等で敢行されることが多く,侵入・訪問によるものは,被害者宅で,物色によるものは自動車内で敢行されることが多い。待ち伏せによるものの犯行場所は多岐にわたっているが,道路等の屋外が最も多い。なお,公衆便所等の割合も低くないことは注目される。
 犯行の手段を見ると,総数411人中,殴打,足げり等の暴行によるものが46.0%,言語のみによる脅迫が20.4%,凶器を示して脅迫したものが8.0%を占めている。

I-61表 犯行態様と犯行場所

I-62表犯行の計画性と犯行場所

(2) 被疑者の特性
 強姦事件被疑者の年齢別構成を見ると,30歳未満が61.6%,30歳代が31.1%,40歳以上の者は7.3%である。I-63表に示したとおり,輪姦は,その92.4%が30歳未満の者によって犯されており,輪姦以外の共犯事件も,その70.3%は30歳未満の者によって犯されている。
 また,職業を見ると,会社員が12.2%,運転手・助手が11.7%,工員及び風俗飲食店関係従業者がいずれも10.7%を占め,一方,無職者は,17.0%に及んでいる。なお,被疑者と被害者の職業を比較したのが,I-9図である。被害者が学生・生徒である場合が比較的多い(27.4%)ことが注目される。

I-63表 犯行態様別被疑者の年齢

I-9図 被疑者・被害者別職業比較

 被疑者の配偶関係を検討すると,I-64表のとおり,未婚者が59.9%と過半数を占めてはいるが,既婚者(内縁関係を含む。)も165人(40.1%)に達し,内縁関係を除く配偶者と同居している者は,89人(21.7%)に及んでいる。
 被疑者の前科・前歴を見ると,強姦,強制わいせつ,公然わいせつ等の性犯罪の前科・前歴を有する者が70人(17.0%),傷害,脅迫,恐喝,暴行,暴力行為等処罰に関する法律違反等の粗暴犯の前科・前歴を有する者が125人(30.4%),その他の前科・前歴を有する者が162人(39.4%)となっている。また,少年時に,保護処分を受けたことのある者は,123人(29.9%)であり,そのうち少年院送致歴を有する者は63人で,保護処分歴を有する者の51.2%を占めている(後掲Iー69表「被疑者の前科・前歴と処分内容」参照)。

I-64表 犯行態様別被疑者の配偶関係

(3) 被害者の特性
 本調査の被害者総数は,343人であるが,その年齢別構成は,12歳以下が16人(4.7%),13歳以上15歳以下が25人(7.3%),16歳以上18歳以下が72人(21.0%),19歳以上24歳以下が101人(29.4%),25歳以上29歳以下が45人(13.1%),30歳代が42人(12.2%),40歳代が24人(7.0%),50歳代が12人(3.5%),60歳代が6人(1.7%)となっている。
 職業別構成比を見ると,前掲Iー9図のとおり,学生・生徒が27.4%で最も多く,主婦・無職が19.2%でこれに次ぎ,以下,風俗・飲食店関係(17.8%),会社員(12.5%),店員,医療保健関係,理容・美容師等となっている。
 被害者の家族関係を見ると,父母と同居している者は127人(37.0%),単身が98人(28.6%),夫及び子供と同居している者は60人(17.5%)であり,その他は内縁の夫,子供,兄弟姉妹のみとの同居などである。

I-65表 被害感情と面識の有無

(4) 被疑者と被害者との関係
 まず,被害者から見た被疑者との面識の有無を見たのが,I-65表である。被害者で被疑者と面識のある者は,159人(46.4%)であって,面識の有無は相半ばしている。面識のある者について,面識の程度を見ると,顔見知り程度のものが64.8%を占めている。知合いの契機としては,風俗営業関係が28.3%,住居近接が24.5%,職場関係が10.7%を占めている。
 被疑者と被害者の年齢の関係を見ると,I-66表のとおり,概して被害者の年齢は低いものの,被疑者の年齢が高くなるにつれて被害者の年齢も高くなっている。しかし,この調査で見る限り,被疑者が50歳以上の場合,被害者の年齢は,18歳以下(44.4%)と40歳以上(33.3%)が多くなっており,高年齢者による強姦事犯の一つの特徴を示している。
 次に,被害感情と「面識の有無」及び「犯行場所」との関係を検討する。まず,面識の有無と被害感情の関係は,I-65表のとおりで,面識のない者に厳罰を希望するものが多い。面識のある者の厳罰希望が49.1%であるのに対し,面識のない者のそれは,63.0%に達している。しかし,面識のある者について,面識の程度による被害感情を見ると,友人関係の者ではむしろ被害感情が強くなっている。また,知合いの契機によって被害感情の強弱を見ると,学校,職場関係を知合いの契機とする者の被害感情が強い。

I-66表 被疑者と被害者の年齢

 被害感情と犯行場所の関係を見ると,I-67表のとおりである。犯行場所を「自動車内」,「公衆便所」,「道路等の屋外」等とするものは,被害感情が強い。これに対して,被疑者宅の場合は,厳罰希望と宥恕がそれぞれ同数を占めている。

I-67表 被害感情と犯行場所

(5) 事件の処理状況
 示談の成立状況及びそれと事件処理との関係を見たのがI-68表である。
 強姦事件は,強盗強姦,強姦致死傷及び2人以上の者が現場において共同して犯した強姦・同未遂を除き,起訴には被害者の告訴が必要とされるいわゆる親告罪であることから,その事件処理に際しては,被害者の処罰意思,特に被疑者と被害者間の示談成立の有無が考慮される。
 調査結果を見ると,被疑者411人中,示談が成立したものは189人(46.0%)で,示談未成立の方が多い。公判請求の割合は,示談が成立している場合の37.6%に対し,示談未成立の場合76.1%に及んでおり,示談成立の有無がその後の事件処理と強く関連していることを示している。
 また,被疑者の前科・前歴と処分との関係を見ると,I-69表のとおりであって,前科・前歴のある者の起訴猶予率は極めて低く,処分に際しては犯歴が十分に考慮されていることがわかる。保護処分歴を有する者では,少年院送致の処分歴を持つ者の76.2%が公判請求となっている。
 更に,被害者の家族関係と処分との関係を見ると,I-70表のとおりである。被害者が,夫,子供,父母等の家族と同居している場合,特に子供のみと同居している場合は,公判請求の割合が高くなっている。これに対して,被害者が知人・友人,内縁の夫と同居している場合には,公判請求の率が低く,告訴取消等による不起訴や起訴猶予となる率が高くなっている。
 以上に見たところから,最近における成人の強姦事件を概観すると,犯行は春や夏の深夜に多く,そして,被疑者宅や旅館・モーテル等で,面識ある者の間で,計画的に行われる場合が相当多いと言えるが,侵入者や偽装訪問者によって被害者宅で襲われる事例や戸外で見知らぬ男に襲われ,また,自動車でら致されて犯されるという事例も決して少ないわけではない。事件は,公判請求に付されることが多いが,事件処理には,被疑者の前歴,示談の有無等が重視されている。

I-68表 示談の成否と処分内容

I-69表 被疑者の前科・前歴と処分内容

 強姦事件は,全体的に減少しつつあり,このこと自体は,喜ばしいことであるが,犯人に前科・前歴を有する者が相当に多いことと被害者の中には年齢の低い者も少なくないので,この種事犯防圧のため,更に一層の努力がなされる必要があろう。
 なお,強姦事件が被害者に対して及ぼす影響には重大なものがあり,本件調査対象者中にも,同級生に強姦致傷を負わせられた被害者が入水自殺な遂げるという悲惨な結末を示した事例があったことを付記しておく。

I-70表 被害者の家族関係と処分内容