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2 保護観察 (1) 一般的傾向 昭和50年中に新たに保護観察に付された者で,道路交通法違反及び業務上(重)過失致死傷等の罪名に該当する者(これらの犯罪を犯した者の大多数は自動車の運転と関係がある者で,以下「交通事件対象者」という。)の人員を保護観察種別ごとに見ると,III-114表のとおりである。
III-114表 保護観察新受人員に占める交通事件対象者の人員(昭和50年) まず,昭和50年における交通事件対象者の新受人員は1万6,510人で,保護観察新受給人員の36.7%を占めている。前年よりも,実人員及び新受総人員中に占める割合は,ともにわずかながら減少している。これを保護観察種別ごとに見ると,交通事件対象者が各種別総人員中に占める割合は,保護観察処分少年57.4%,少年院仮退院者4.8%,仮出獄者19.4%及び保護観察付執行猶予者18.1%となっていて,保護観察処分少年の割合が著しく高い。前年に比べると,この割合は,少年院仮退院者のみが若干増加しているが,その他の種別については,すべて横ばいないしやや減少している。最近5年間における交通事件対象者の新受人員を,道路交通法違反と業務上(重)過失致死傷に分けて見たのが,III-115表である。全体としては,昭和48年以降減少傾向にあるが,道路交通法違反は50年に増加している。これは,主として保護観察処分少年の道路交通法違反の人員が増加したことによるものである。 III-115表 交通事件保護観察対象者受理状況(昭和46年〜50年) 保護観察新受給人員中に占める交通事件対象者の割合の推移を,過去10年間について見たのが,III-17図である。保護観察処分少年は,全般にその割合が高く,昭和48年まで増加して59.0%に達し,以後漸減している。少年院仮退院者は,その割合が最も低いが,傾向としては,47年まで増加し,48年にやや減少したが.再び増加して50年には最高の4.8%となっている。仮出獄者は,47年まで増加の傾向をたどって25.7%に達したが,以後減少傾向にある。保護観察付執行猶予者は,49年まで増加して21.1%になったが,50年には減少している。III-17図 保護観察新受総数中に占める交通事件対象者構成比の推移(昭和41年〜50年) (2) 交通事件対象者の特性 最近における交通事件対象者の一般的特性をは握するため,主として,年齢層別及び処分歴別によって考察を加える。
まず,保護観察処分少年について,昭和50年に全国の保護観察所が受理した交通事件対象者を,年齢層別に道路交通法違反と業務上(重)過失致死傷とに分けて見たのが,III-116表である。年少少年・中間少年(17歳以下)では,道路交通法違反の占める割合が75%〜76%,業務上(重)過失致死傷のそれが24%〜25%であるのに対し,年長少年(18歳以上)では,それぞれ約68%及び32%であって,年長少年の業務上(重)過失致死傷の割合が幾分高くなっている。 III-116表 年齢層別保護観察処分少年交通事件新受人員(昭和50年) 次に,昭和49年中に全国の家庭裁判所において車両運転による業務上(重)過失致死傷で保護観察処分を受けた者の前処分を見ると,III-117表のとおりである。前処分の多くは交通に関する非行と思われるが,この種対象者で,前処分のある者が総数の46.1%を占めていて,その割合は高い。III-117表 車両運転の業務上(重)過失致死傷少年の前処分回数(昭和49年) 刑事処分を受けた交通事件対象者については,昭和50年に法務総合研究所が行った特別調査がある。これは,48年中に全国の保護観察所が新たに受理した交通事件の仮出獄者及び保護観察付執行猶予者のうちから,それぞれ業務上(重)過失致死傷及び道路交通法違反の罪名別に無作為抽出して,分析を試みたものである。まず,保護観察開始時における年齢層別人員を,保護観察の種別及び罪名との関連で見たのが,III-118表である。仮出獄者の中で29歳以下の者が占める割合は,業務上(重)過失致死傷では57.8%であるのに対して,道路交通法違反では31.7%である。一方,保護観察付執行猶予者では,同じく29歳以下の者が占める割合は,業務上(重)過失致死傷では68.9%を占めているのに対して,道路交通法違反では43.2%である。一般に,業務上(重)過失致死傷は道路交通法違反よりも,また,保護観察付執行猶予者は仮出獄者よりも,年齢の若い者を多く含んでいる。 III-118表 交通事件対象者の年齢層別人員(昭和48年) 次に,この交通事件対象者の前歴について見ると,III-18図に示すとおりで,交通犯罪の罰金前歴を持つ者の占める割合が極めて高く,また,執行猶予や交通犯罪以外の罰金等の前歴を有する者も相当数存在する。交通犯罪による罰金の前歴について,その回数を見たのが,III-119表である。道路交通法違反の場合は,仮出獄者及び保護観察付執行猶予者のいずれにおいても,5回以上の回数の者が約50%含まれている。III-18図 交通事件対象者中に占める前歴のある者の比率(昭和48年) III-119表 交通事件対象者の交通犯罪による罰金前歴回数(昭和48年) (3) 保護観察の成績 昭和50年中に保護観察を終了した交通事件対象者の成績を,保護観察終了者総人員との対比で見たのが.III-120表である。一般に交通事件対象者の終了時成績は良好で,特に保護観察処分少年においては,その傾向が顕著である。保護観察処分少年の成績が良好であるのは,この種の少年に対する保護観察が有効に運用されているとともに,これらの少年には,性格・環境面で比較的問題の少ない者が多いことや,保護観察の手続に関する通達により保護観察の解除要件が緩和されていることなどによるものと思われる。
III-120表 保護観察終了人員中交通事件対象者の終了事由別状況(昭和50年) (4) 交通事件対象者の処遇 交通事件対象者に対しては,その特殊性,人員の大量性,再犯の場合の結果の重大性等にかんがみ,保護観察所においては,この種対象者の違法かつ危険な運転の防止や,あらゆる状況場面に適応した安全な運転等を目的とした指導及び援助活動を積極的に行っている。交通事件対象者にも,保護観察官と保護司が協力して個別処遇を基礎とした処遇が実施されているが,最近の傾向として,この個別処遇に加えて集団処遇も活発に行われている。これは,一般に交通事件対象者は,犯罪が概して悪質でなく,非行性もそれほど進んでおらず,車の運転や車両構造に共通の関心を持っていることなどのため,比較的集団処遇になじみやすいほか,保護観察所側としても,処遇の効率的運用を図ることや,彼らのニードを的確に充足するための専門的指導を実施して処遇効果を挙げ得ることなどによるものであろう。
昭和49年中に全国の保護観察所で行われた集団処遇実施状況を調査した法務省保護局の資料によると,全国ほとんどすべての保護観察所において,交通法規や車両等に関する講習,運転適性や交通法規の知識等についての集団検査,グループ・カウンセリング,座談会形式による集団指導,そのほか,映画,講話,運転実技指導等,何らかの形の集団処遇が実施されている。同年中に全国保護観察所で行われた集団処遇の実施回数は472回で,実施対象者延べ人員は8,820人に及んでいる。その中には,計画的にカリキュラム(教程)を設定して,法規学習,実技指導,遵法意識のかん養,運転態度の改善等を意図的・積極的に図っている集団処遇があり,全般的に見て,この交通事件対象者に対する集団処遇は,保護観察の有効な処遇方法の一つとして急速に進展し,実務に定着化していると言える。 |