前の項目 次の項目 目次 図表目次 年版選択 | |
|
2 交通犯罪の裁判 業務上(重)過失致死傷事件のうち,通常第一審及び略式手続で有罪の裁判があったものの総数とその科刑の状況を見たのが,III-99表である。業務上(重)過失致死傷により有罪の裁判を受けた者の数は,昭和45年以降減少しており,49年では前年より5万8,787人減少して,30万7,609人となっている。有罪裁判を受けた者のうち自由刑に処せられた者の占める割合は,45年以降若干の起伏を示しながらも概して上昇傾向にあり,50年には総数の3.7%となっている。しかし,実刑言渡率は,懲役・禁錮のいずれについても45年以降おおむね低下する傾向を示しており,50年では,懲役刑が39.7%,禁錮刑が20.3%となっている。
III-99表 業務上(重)過失致死傷第一審科刑状況(昭和45年〜49年) 次に,昭和48年と49年に通常第一審で自由刑の言渡しのあった業務上過失傷害及び同致死事件について,刑種別に刑期の分布を見たのが,III-100表である。業務上過失傷害について見ると,49年では自由刑を言い渡された者のうち,48.1%が懲役刑に,51.9%が禁錮刑に,それぞれ処せられている。刑期分布では,懲役・禁錮ともに6月以上1年未満の刑期が最も多い。業務上過失致死について見ると,傷害事件に比べて禁錮の言渡しを受けた者の割合が高く,その刑期は,懲役では1年以上2年未満が最も多く,禁錮では6月以上1年未満が多い。III-100表 業務上過失致死傷通常第一審科刑状況(昭和48年・49年) III-101表は,最近5年間の業務上(重)過失致死傷の通常第一審における実刑言渡率を見たものである。通常第一審で自由刑を言い渡された業務上(重)過失致死傷総数のうち実刑を言い渡された者の占める割合(実刑言渡率)は,昭和45年以降わずかずつ低下してきている。49年について,実刑言渡率の高いのは,業務上過失致死,業務上過失傷害,重過失致死傷の順であり,一般に禁錮刑より懲役刑の方が高い実刑言渡率を示している。III-101表 業務上(重)過失致死傷通常第一審実刑言渡率(昭和45年〜49年) 次に,業務上(重)過失致死傷のうちで,いかなる態様のものに実刑が言い渡されているかを見るため,昭和46年から別年までに東京地方裁判所で自由刑を言い渡された業務上(重)過失致死傷の総数について,過失態様別に実刑言渡人員と実刑言渡率を見たのが,III-102表である。酒酔い・無免許運転を伴う事故,ひき逃げ事故で実刑言渡率が高い。III-102表 過失態様別業務上(重)過失致死傷実刑言渡人員と実刑言渡率(昭和46年〜50年の累計) 昭和49年における道路交通法違反事件の科刑状況を見ると,通常第一審の有罪総人員は7,141人で,その内訳は,懲役・禁錮の実刑が1,786人,懲役・禁錮の執行猶予が3,467人,罰金・科料が1,888人(うち科料4人)である。略式・即決手続では,有罪総人員(罰金・科料)は,156万1,139人(うち科料1万5,421人)となっている。次に,道路交通法違反のうちで,いかなる態様のものに実刑が言い渡されているかを見るため,昭和46年から50年までに東京地方裁判所で自由刑を言い渡された道路交通法違反の総数について,違反態様別に実刑言渡人員と実刑言渡率を見たのが,III-103表である。実刑を言い渡された者の約9割が,酒酔い又は無免許運転の違反態様で占められている。 III-103表 違反態様別道路交通法違反言渡人員と実刑言渡率(昭和46年〜50年の累計) 次に,昭和49年に簡易裁判所で略式命令を受けた業務上過失致死傷事件について,傷害・致死の別に罰金額の分布を見ると,III-104表のとおりである。49年では,罰金額は前年に比べ高額化しており,総数中で占める5万円以上の罰金の比率は,業務上過失傷害で38.9%,業務上過失致死で98.5%となっている。III-104表 業務上過失致死傷略式命令罰金分布状況(昭和49年) |