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 昭和51年版 犯罪白書 第2編/第4章/第4節/4 

4 更生保護会

 先に述べたように,更生緊急保護及び救(援)護における保護措置の方法としては,保護観察所が自ら行う自庁保護と更生保護会に委託して行う委託保護とがある。この委託保護を実施する更生保護会は,法務大臣の認可を受けて更生保護事業を営む法人又はこれに準ずる団体であって,保護観察対象者及び刑務所からの満期釈放者,起訴猶予者,保護観察の付かない執行猶予者等で適当な住居がないため更生を妨げられるおそれのある者を保護施設に宿泊させ,食事の給与,教養,訓練,就職援助,環境の改善・調整等を図ることをその任務としている。
 更生保護会に対しては,国から被保護者の補導,宿泊,食事給与等の直接保護に要する費用と事務費に充てるための委託費が支給されるほか,施設設備の基準維持のため,その補修に要する経費の補助がある。この委託費は,実際に保護した人員に応じて支給されている。そのため,近年被保護者の減少に伴い,経営が容易でない更生保護会も相当ある現状である。
 昭和51年4月1日現在で実際に活動中の更生保護会は,II-82表に示すとおり104施設で,そのうち男子のみを収容する施設が93施設,女子のみのものが5施設,男女とも収容できるものが6施設あり,収容定員総数は2,979人である。なお,常時収容保護をしている人員は,収容定員の約49%程度である。

II-82表 更生保護会の種類別保護施設数と収容定員(昭和51年4月1日現在)

 ところで,II-83表に見るとおり,昭和50年に刑務所を出所した受刑者2万6,669人のうち,その20.9%に当たる5,586人が更生保護会を帰住先にしている。その比率は,受刑前歴を加えるに従って増大し,入所度数5度以上になると,40%強の者が更生保護会を帰住先にしており,前年に比べて実数,比率とも増加している。この事実は,累犯者,家庭環境に恵まれない者,心身に欠陥のある者等,特に処遇に困難を伴う者の社会復帰を図るためには,更生保護会の存在が不可欠であることを示唆するものと言えよう。

II-83表 出所受刑者の入所度数別更生保護会帰住人員(昭和50年)

 以上は,直接保護事業を営む更生保護会についてであるが,連絡助成事業を営む更生保護会は,原則として保護施設を持たずに専ら更生保護事業の指導,連絡又は助成を行っており,通常,それらの団体には,「更生保護協会」とか「保護観察協会」といった名称が付けられている。この種の団体は,昭和51年6月末現在,全国で58団体あり,地方公共団体,関係機関等の協力の下に,保護司活動に対する助成をはじめとして,地域における更生保護事業に寄与している。