前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和51年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/2 

2 刑の執行猶予

(1) 統計から見た執行猶予率

 II-12表は,第一審で有期の懲役又は禁錮を科せられた者の中に占める執行猶予に付された人員の比率(執行猶予率)を見たものである。昭和30年に46.1%であった執行猶予率は,その後次第に上昇しており,49年には58.8%となっている。

II-12表 第一審懲役・禁錮言渡人員中の執行猶予人員と比率(昭和30年,35年,40年,45年〜49年)

 次に,前掲のII-10表によって,懲役・禁錮の確定判決を受けた者のうち執行猶予となった者の比率を見ると,昭和和年では,懲役58.5%,禁錮81.7%となっている。
 次のII-13表は,執行猶予の言渡しを受けた者を該当法条別:こ示したうえ,保護観察に付されたものの割合を見たものである。昭和和年では,いわゆる初度目の執行猶予(刑法25条1項)の言渡しを受けた者が執行猶予者の96.2%を占めているが,このうちで,裁量的に保護観察に付された者は13.5%である。

II-13表 執行猶予確定人員中の該当法条別人員及び保護観察言渡人員(昭和49年・50年)

 刑法犯の主要罪名について,昭和49年に通常第一審で懲役又は禁錮の言渡しを受けた者のうち執行猶予に付された者の人員とその比率を見ると,II-14表のとおりである。執行猶予率の高いのは,贈賄の98.9%,収賄の96.1%,公務執行妨害の80.1%などであり,その率の低いのは,殺人の29.4%,強盗の34.4%,放火の36.9%,強制わいせつ,強姦致死傷の38.4%などである。なお,執行猶予のうち,保護観察に付された者の割合は,18.3%であるが,罪名別に見ると,強盗の42.1%,強姦の36.0%などが高率となっている。

II-14表 刑法犯通常第一審主要罪名別執行猶予率(昭和49年)

(2) 執行猶予の期間と刑期

 II-15表は,刑の執行猶予の言渡しを受けた人員について,その猶予期間を見たものである。昭和50年では,猶予期間3年以上4年未満のものが最も多く,総数の58.2%を占めている。30年以降の推移を見ると,猶予期間4年以上5年未満のものが増加し,猶予期間1年以上2年未満のものが減少してきており,一般に猶予期間がわずかずつ長期化してきている傾向がうかがわれる。

II-15表 執行猶予確定人員の猶予期間別人員と百分比(昭和30年,35年,40年,46年〜50年)

 次に,執行猶予の言渡しを受けた人員を,懲役・禁錮の刑期別に示すと,II-16表のとおりである。昭和50年において,懲役・禁錮で執行猶予の言渡しを受けた人員の77.9%までが刑期1年以下のものである。30年以降の推移を見ると,刑期が1年を超え3年以下のものが増加し,刑期が6月を超え1年以下のものが減少してきており,一般に,執行猶予判決の刑期は長期化していると言えよう。

II-16表 懲役・禁錮の執行猶予確定人員の刑期別人員と百分比(昭和30年,35年,40年,46年〜50年)

(3) 執行猶予の取消し

 最近3年間について,刑法犯及び特別法犯の執行猶予の言渡しを受けた人員,執行猶予の取消しを受けた人員,取消率及び取消事由を見たのが,II-17表である。ここにいう取消率とは,ある年次において,執行猶予の取消しを受けた人員を,その年次における執行猶予の言渡しを受けた人員で除した値であって,正確な意味での取消率とは言えないが,大体の傾向を知ることはできるであろう。昭和50年の執行猶予の取消率は,刑法犯で10.5%,特別法犯で5.8%,両者の合計では9.6%と,いずれも,過去3年で最も高い比率を示している。

II-17表 刑法犯・特別法犯の執行猶予の確定・取消・取消事由別人員(昭和48年〜50年)

 また,取消事由別に見ると,再犯による自由刑の実刑確定等を理由とする必要的取消し(刑法26条1号)が最も多く,昭和50年には,執行猶予取消総数の94.9%を占めている。