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 昭和51年版 犯罪白書 第1編/第2章/第2節/4 

4 損害賠償・被害感情等

 事件記録の調査により,[1]示談の成否,[2]損害賠償金等の受領状況,[3]損害賠償金等の受領額について見たのが,I-65表である。まず,示談の成否を見ると,示談が成立しているものは,傷害事件で34.1%,死亡事件で15.9%にすぎない。いずれも示談不成立又は不明のものが多く,また,不明のもののうちの多くは示談が成立していないものと見ることができる。死亡事件において,傷害事件の場合と比較して示談の成立していないものが多いのは,一般に人命を失わせるような重大事件では示談にするために多額の金額の支払を必要とするが,実際には加害者に資産のない者が多いことなどによるものであろう。損害賠償金等を受領したものについてその受領金額を見ると,50万円以下のものが,傷害事件(ただし,金額の判明した189件)で約9割,死亡事件(ただし,金額の判明した72件)で約5割を占めている。

I-65表 生命・身体犯による被害の回復状況等

 次に前述の第二の調査によって被害感情等を見ることとする。
 まず,被害者のうちで加害者に対する刑事処分の結果を知っているものは,全体の5割ないし6割である。知っているものについて,その処分に対する意見を分析すると,処分が軽過ぎるというものが,傷害事件で45.0%,死亡事件で73.2%となっており,刑事上の処分に不満を持つものが少なくない。次に,加害者に対する現在の感情については,絶対許せないとするものが,傷害事件で44.2%,死亡事件で63.4%となっており,この種事犯における被害感情の強さが顕著に現れている。加害者に対する気持が事件直後と比べ変わったか否かについては,変わらないとするものが半数以上である。また,犯罪の被害補償に対する考え方について見ると,できれば国家が代わって賠償して欲しいというものがほぼ半数を占め,国家が加害者に代わって賠償するのが当然であるとするものや,保険制度を充実して欲しいというものもかなり多い。最後に,被害者の保険加入の有無について見ると,生命保険その他何らかの保険に加入しているものは,傷害事件で58.4%,死亡事件で39.0%となっており,また,加入している保険の種類はほとんど生命保険であるが,その保険金額は死亡事件でも200万円以下の低額のものが大部分である。