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 昭和50年版 犯罪白書 第3編/第3章/第4節/2 

2 保護観察

 道路交通法違反及び業務上(重)過失致死傷(後者の大多数は自動車運転によるもの。)により,昭和49年中に新たに保護観察の対象となった人員は,III-148表に示すとおりである。

III-148表 保護観察新受人員に占める交通事件対象者の人員(昭和49年)

 すなわち.新受総数は1万6,523人で,これは保護観察新受総人員の37.3%に該当する。前年に比べ,総数においてはこの比率にほとんど変化が見られない。保護観察の種別ごとに交通事件対象者の占める割合を見ると,保護観察処分少年57.7%,少年院仮退院者3.6%,仮出獄者22.3%,保護観察付執行猶予者21.1%となっており,保護観察処分少年においてその割合が非常に高い。この情勢を前年と比べると,少年院仮退院者と保護観察付執行猶予者の中に占める割合が増加し,他面,保護観察処分少年と仮出獄者中のそれが減少している。
 III-149表は,最近5年間における交通事件保護観察対象者の新受人員を道路交通法違反と業務上(重)過失致死傷とに分けて掲げたものである。少年院仮退院者と保護観察付執行猶予者,特に後者の増加が見られるが,保護観察処分少年と仮出獄者は減少しており,全体として,前年よりもなお869人(5.0%)減っている。

III-149表 交通事件保護観察対象者受理状況(昭和45年〜49年)

 交通事件保護観察対象者の中で,その大半を占めている保護観察処分少年について,更に幾つかの事項を取り上げて検討する。
 III-150表は,年齢層別に道路交通法違反と業務上(重)過失致死傷の占める割合を見たものであり,年齢が高くなるに従って業務上(重)過失致死傷の占める割合が高くなっている。

III-150表 年齢層別少年交通事件新受人員(昭和49年)

 次に,昭和48年中に全国の家庭裁判所において業務上(重)過失致死傷により保護観察処分を言い渡された者について,その被害程度をIII-151表で見ると,死亡に至ったもの5.8%,加療1箇月以上の負傷のもの31.2%である。

III-151表 保護観察処分少年の業務上(重)過失致死傷の被害程度(昭和48年)

 また,同じ保護観察処分少年について前処分回数別免許の有無別に見たのが,III-152表である。前に家庭裁判所で何らかの処分を受けた者が総数中48.3%あり,2回以上の処分を受けたことのある者は約2割を占めている。同表で免許の有無について見ると,無免許者は総数のうち15.0%であるが,前処分の有無別にこれを見ると,前処分のない者に無免許者の占める割合が高い。

III-152表 前処分回数・免許の有無別人員(昭和48年)

 最後に,交通事件による保護観察対象者の保護観察終了時の成績を全保護観察対象者との比較で見たのが,III-153表である。

III-153表 保護観察終了人員中交通事件対象者の終了事由別状況(昭和49年)

 全般に,前者は後者に比べ非常に成績が良好である。特に,保護観察処分少年は,良好群が77.8%(うち,解除65.4%)に達しており,不良群は3.7%にすぎない。交通事件保護観察処分少年がこのように良好な成績をもって終了しているのは,そこに保護観察の成果を見ることができるとともに,この種少年が他の一般事件の少年に比べて,本来,性格,環境面でより問題点の少ない者が選ばれてくることのほかに,保護観察手続において特別な規定が設けられ,保護観察の解除の要件も緩和されていることなどによるものと思われる。