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 昭和50年版 犯罪白書 第3編/第3章/第1節/2 

2 交通事故事件

 最近3年間について,交通関係の業務上(重)過失致死傷事件の検察庁への送致件数及び送致人員を罪名別に見ると,III-122表のとおりである。昭和49年では,交通関係の業務上(重)過失致死傷事件の送致総数は46万960件,48万9,063人であり,件数,人員ともに前年より減少している。罪名別に見ても,すべての罪名で減少している。

III-122表 交通関係業務上(重)過失致死傷送致件数及び人員の推移(昭和47年〜49年)

 次に,交通事故に関する統計によって,交通事故事件の最近の傾向を概観する。
 まず,昭和49年の交通事故による死傷者数を地方別に前年と対比してみると,III-123表のとおりである。49年は,各地方とも,死亡者数及び負傷者数が前年より減少しているが,全国平均の減少率より減少の程度の大きい地方は,死亡者では,北海道,東北,近畿,中部の各地方であり,負傷者では,北海道,四国,九州,近畿の各地方である。なお,都道府県別に見ると,死亡者数では,島根県(3人増加)で増加したほかは,いずれも減少しており,負傷者数では,すべての都道府県において減少している。

III-123表 地方別交通事故死傷者数(昭和48年・49年)

 次に,警察庁の資料により,昭和49年について,交通事故による死亡者数を都道府県別に見ると,埼玉(518人),大阪(514人),神奈川(500人),千葉(489人),北海道(483人)などが多く,鳥取(72人),佐賀(90人),徳島(95人),島根(99人),奈良(100人)などが少ない。人口10万人当たりの死亡者数(死亡者率)では,茨城(21.0),山梨(18.1),香川(18.0),高知(17.5),和歌山(17.0)などで高率であり,東京(3.8),大阪(6.3),長崎(7.6),神奈川(8.0),愛知(8.1)などで低率を示している。
 また,人口10万人以上の168市について,昭和49年の死亡者率を見ると,高い市は山口(28.4),熊谷(21.9),鈴鹿(21.6),上越(21.5),市原(21.0)などであり,低い市は,東村山(0),武蔵野(0.7),府中(1.1),新座(2.0),守口(2.2)などである。
 次に,III-124表は,人身事故について,事故の主たる原因となった自動車の種別ごとにそれぞれの事故発生件数を見たものである。昭和49年は,自家用自動車の事故が総数の79.6%,事業用自動車と二輪車の事故がそれぞれ10.2%となっているが,最も多いのは自家用乗用普通自動車による事故で,総数の43.0%を占め,自家用貨物普通自動車による事故がこれに次いでいる。前年と比較してみると,いずれの車種による事故も減少しているが,減少の件数が多いものは,自家用乗用普通自動車による事故と自家用貨物普通自動車(特定大型・大型を含む。)による事故である。

III-124表 事故の主たる原因となった車種別人身事故件数(昭和48年・49年)

 次のIII-125表は,自動車による人身事故を事故の類型別に分類して,最近の5年間について見たものである。昭和49年の実数は,いずれの事故類型についても,前年より減少している。

III-125表 事故類型別発生状況(昭和45年〜49年)

 また,昭和49年の車両相互間の事故について,事故態様別構成比を見ると,III-18図のとおりである。最も多いのが追突事故で全体の約3割を占めており,次いで,出合い頭の衝突事故,右折時の側面衝突事故の順となっている。なお,人対車両の事故では横断歩行中の事故が最も多く,次いで,路上への飛出しによる事故となっている。

III-18図 車両相互間の交通事故態様別発生件数の構成比(昭和49年)

 次に,昭和49年中の死亡事故を態様別に見ると,歩行中の事故が36.2%,自転車乗車中の事故が11.4%で,この両者が死者総数のほぼ半数を占めている。また,歩行者の死者数を年齢別に見ると,9歳以下が23.6%,60歳以上が38.0%と,子供と老人の死者が総数の6割以上を占めている。