昭和49年における交通事故は，発生件数，死亡者数，負傷者数ともに前年より大幅に減少し，46年以降4年連続して減少を続けている。
　III-120表は，昭和20年，25年，30年，35年と40年以降における交通事故の発生件数，交通事故による死亡者と負傷者の人員を示し，この死亡者と負傷者の人口10万人当たり，1日当たりの数(事故率)を比較したものである。49年に発生した死傷者を伴う交通事故は49万452件で，前年より16.4％減少し，死亡者数は1万1,432人で21.6％の減，負傷者数は65万1,420人で17.5％の減となっている。人身事故の発生件数，死傷者数及び事故率は45年までは多少の起伏はありながらも一貫して著しい増加の傾向を示してきたが，46年以降減少の傾向をたどっている。しかし，なお1年間の死傷者数は66万2,852人に上っており，これを1日当たりで見ると，死亡者は31.3人，負傷者は1,784.7人となり，人口10万人当たりで見ると，死亡者は10.4人，負傷者は591.9人という高い数を示している。この数字が示すように，交通事故は，依然として国民生活に重大な脅威となっている。

III-120表　交通事故の発生件数，死傷者数及び事故率累年比較(昭和20年，25年，30年，35年，40年〜49年)

　交通事故による死傷者数と自動車保有台数の関係を検討するため，自動車と原動機付自転車の各台数，自動車1万台当たりの死傷者数の推移を見ると，III-121表のとおりである。昭和49年における我が国の自動車保有台数は，前年より約153万台増加して約2,770万台となり，40年と比較すると3.5倍の増加となっている。自動車1万台当たりの死亡者は4.1人，負傷者は235.0人となっている。また，自動車台数の増加とともに，これを運転する資格を与えられる者の増加も著しく，49年末現在の運転免許取得者数は全国で約3,214万人で，前年より約136万人増加している。

III-121表　自動車台数と交通事故率累年比較(昭和20年，25年，30年，35年，40年〜49年)

　また，交通事故による死亡者数及び負傷者数，自動車保有台数の推移を，昭和40年を100とする指数によって見ると，III-17図のとおりである。44年までは，自動車保有台数の増加に伴って，交通事故による死傷者数も増加してきたが，45年を境として，この傾向に変化を生じ，自動車保有台数の伸びにかかわらず，死傷者数はかえって減少しつつある。この傾向がどこまで続くかは注目されるところである。

III-17図　交通事故による死傷者数及び自動車保有台数(昭和40年〜49年)

　なお，交通犯罪は，業務上(重)過失致死傷(刑法211条)の罪に該当するものと，道路交通法その他交通関係法令の罰則に違反するものとに大別されるので，本章では，この二つを並行させながら，その概況を見ていくこととする。