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4 その他の諸問題 (1) 共犯関係 少年犯罪の一つの特徴として,犯行の集団性が指摘されることが多い。III-30表に示すように,昭和49年の道路交通による業務上(重)過失致死傷を除く少年刑法犯検挙件数のうち,2人以上の少年の共犯による犯行は36.6%に及んでいるが,同様条件における成人のそれは11.9%にすぎず,成人に比べて,少年の共犯事件の割合は著しく高率となっている。また,これを主要罪名別に見ると,強盗が53.6%で最も高く,以下,恐喝,強姦,暴行,傷害の順となり,少年の凶悪犯及び粗暴犯は2人以上共同して犯される率が特に高いことを示している。
III-30表 主要罪名別共犯事件の検挙件数(昭和49年) 次に,法務省特別調査により,共犯者の構成内容(III-31表参照)を見ると,共犯者は3人以内によって構成されることが多く(78.5%),4人以上は低率となり,比較的小集団による犯行がうかがわれる。III-31表 共犯人員(昭和49年) 更に,同じく法務省特別調査によって,昭和40年代の少年の共犯率(2人以上共同して犯罪を犯した者の総数に対する比率)の推移を年齢層別に見ると,III-32表のとおりである。40年代の全般を通じて,各年齢層とも起伏のある動きを示しているが,共犯率は,いずれの年においても,年齢層が低くなるに従って高くなっている。ここ数年の全体的推移としては,共犯関係にある年少少年の上昇傾向と年長少年の低下傾向とを指摘することができる。III-32表 年齢層別共犯少年の構成比の推移(昭和42年〜49年) なお,警察庁が,昭和49年の少年刑法犯検挙人員のうち道路交通による業務上(重)過失致死傷を除いた11万5,453人について,学職別に非行集団への所属状況を調査したところによると,III-33表に示すとおり,非行集団に関連があるのは総数の25.7%で,前年に比べて全般に上昇している。学職別では,無職少年の26.5%及び学生・生徒の26.4%が有職少年の22.8%よりやや高くなっている。また,学生・生徒のうちでは,中学生が29.9%と最も高く,高校生,大学生の順に低くなっている。III-33表 犯罪少年の学職別非行集団関連状況(昭和49年) III-34表は,業務上(重)過失致死傷を除く少年刑法犯検挙人員のうち,非行集団と関連のある少年について,その関連の状況を示したもので,集団形態別及び非行形態別にその実数及び構成比を示している。集団形態別では,学校集団に属する者が51.1%を占めて最も大きく,地域集団がこれに次ぎ,盛り場集団や職場集団の割合は極めて小さい。一方,非行形態別では,窃盗集団が52.9%と最も大きく,粗暴犯集団がこれに次ぎ,その他の非行形態を採る集団の割合は極めて小さい。III-34表 非行集団の集団形態別及び非行形態別構成比(昭和49年) (2) 再犯少年 III-35表は,全国の家庭裁判所が取り扱った一般保護少年の終局人員について,再犯少年の昭和36年以降における動向を見たものである。家庭裁判所の処分歴(刑事処分,保護処分,不処分,審判不開始など)がある者の48年における割合は,刑法犯については,22.6%と36年以降の最低を示し,40年代の低下傾向がいっそう顕著なものとなっている。また,道路交通法違反を除いた特別法犯については,20.0%と前年よりやや低下したが,大勢としては起伏に富む40年代の動きの一環として理解すべきであろう。
III-35表 一般保護事件終局実人員中前処分のある者の比率(昭和36年〜48年) 次に,一般保護少年について,前処分の有無と罪名との関連を見ると,III-36表のとおりである。処分歴のある少年の割合は,強姦が40.4%で最も高く,以下,強盗,詐欺,恐喝,殺人の順となっているが,前年に比べてその順位はかなりの変化を示している。再犯少年の占める割合の低い罪名では,横領の14.3%が最も低い。前処分で高率を示す罪名は,詐欺を除いて,いずれも凶悪犯や粗暴犯であり,これらの犯罪が累犯傾向の強い少年によって犯されている点に特に注目する必要がある。III-36表 一般保護少年の非行別前処分の有無(昭和48年) また,法務省特別調査によって,年齢層別,主要罪名別に前処分のある者の占める割合を見たのが,III-37表である。各年齢層とも,前年に比べてその割合はやや低下しているものの,なお年少少年の13.3%,中間少年の18.7%及び年長少年の24.4%が処分歴を有している。III-37表 年齢層別・主要罪名別前処分のある者の比率(昭和49年) 処分歴のある者の占める割合の高い罪名を年齢層別に見ると,年少少年では,強姦,恐喝及び傷害,中間少年及び年長少年では強盗,恐喝及び強姦となっている。各年齢層を通じて,強姦の占める割合が高く,窃盗の割合がかなり低いが,一般に粗暴犯及び凶悪犯において処分歴を有する者の比率が高いことが注目される。更に,昭和48年における一般保護事件の終局決定別にそれぞれの処分決定と前回の終局決定との関連を見たのが,III-38表である。「前処分あり」の割合が大きいのは,保護処分のうちの少年院送致及び検察官送致の者であって,それぞれ,74.0%及び59.9%に達している。前処分のある者について,その処分の内訳を見ると,刑事処分相当を理由とする検察官送致の者においては,前処分は刑事処分が26.5%,保護観察が21.0%,少年院送致が18.3%,不処分・審判不開始が30.8%となっている。同様に,少年院送致の者においては,前処分は少年院送致が14.8%,保護観察が39.8%,不処分・審判不開始が41.6%となっており,また,保護観察の者においては,前処分は保護観察が8.5%,不処分・審判不開始が86.2%となっている。なお,不処分・審判不開始の者においては,その84.7%が前処分なしとなっている。このような状況から,一般保護事件の終局決定が段階的になされる傾向のあることが指摘できる。 III-38表 一般保護事件終局決定別前処分の有無・前回終局決定状況(昭和48年) 次に,法務省特別調査によって,昭和40年代における再犯期間(前回処分から再犯に至るまでの期間)の推移を見たのが,III-39表である。49年においては,3月未満の者が20.7%,6月未満の者では42.4%,1年未満になると65.9%に達し,この傾向は,ほとんど前年と差異はない。また,40年代における各再犯期間別の人員及び構成比を見ると,前回処分後3月未満で再犯したものが全体の約20%,6月未満の者が約40%,1年未満の者がほぼ65%となっており,1年6月以上の者の占める割合は極めて小さい。すなわち,前回処分を受けた者の約三分の二が,処分後1年足らずの間に再犯に陥っていることになり,再犯防止対策上特に留意を要する点となっている。III-39表 前回処分後の再犯期間の推移(昭和42年〜49年) (3) 自動車と犯罪 近年におけるモータリゼーションの進行に伴い,自動車は,交通手段の一つとして一般化し,身近な乗り物として,少年たちが日常利用し得る機会が増大している。確かに,自動車は,スピード感,スリル感,密室における自由感,行動圏拡大の可能性などを与えるため,少年たちにとって,単なる交通手段にとどまらず,欲求充足や不満の解消手段として魅力あるものとなっているが,他面,自動車利用の日常化とその魅力は,交通関係事犯以外の少年犯罪においても,自動車を犯罪の対象又はその手段とする傾向が認められる原因ともなっている。
自動車と犯罪との関連を見る場合,一般的には,自動車を犯罪の対象とするもの,手段とするもの,あるいは,車上窃盗や交通事故に絡む傷害などのような形で関連を持つものというように,3種の関連の仕方が考えられる。法務省特別調査により,昭和40年代における罪名と自動車との関連状況の推移を示し,加えて,49年における犯行形態と自動車との関連を見たのが,III-40表である。対象少年の総数において,40代前半に増加傾向にあった関連率は,45年の23.0%をピークとして,その後減少ないしは横ばい状況を示し,49年では19.6%と前年とほとんど差異のない数値となっている。 III-40表 罪名別・犯行形態別自動車との関連(昭和42年〜49年) また,犯行形態との関連を同表の昭和49年について見ると,全体として,自動車は,犯罪の手段とされるよりも,その対象とされる場合が多い。罪名別との関連においては,窃盗,詐欺などの財産犯は,自動車を犯罪の対象とし,強姦,殺人などの性犯罪や凶悪犯は,それを犯罪の手段として利用する場合が多いのに対し,強盗はいずれの形態にも少なからず関連を有している。なお,主要罪名別の自動車関連率について,昭和40年代の推移を見ると,一般に関連率が高いのは,強姦,強盗,窃盗,詐欺,横領などであり,低いのは,恐喝,暴行,脅迫などとなっている。40年代の全般を通じて上昇傾向の見られる罪名としては,強姦や強盗などが,低下の目立つ罪名としては,脅迫や暴行などが挙げられる。 次に,法務省特別調査によって,犯行地を都市と郡部に分け,罪名別に自動車との関連を見たのが,III-41表である。昭和49年において,自動車に関連のある犯罪を犯した者は,対象少年の19.6%で,そのうち,都市を犯行地としている場合は17.9%,郡部を犯行地としている場合は28.6%で,自動車に関連する犯罪は,依然として,都市よりも郡部において多発している。 III-41表 罪名別・地域別自動車との関連(昭和49年) また,罪名別の自動車との関連状況については,最も多いのが強姦であり,全地域を通じて40%以上の高率を示し,この種犯罪の手段として,自動車が悪用されやすいことがうかがわれる。(4) 被害者から見た特質 犯罪は単に加害者の資質や環境だけに起因するものではなく,加害者と被害者との関係によって生じることも少なくない。特に,犯罪少年においては,被害経験が犯罪学習の契機となり,犯罪の手口などの習得を経て,やがて犯行に至るという経過をたどることもあるので,特に留意する必要がある。
法務省特別調査によって,罪名別に,犯罪少年と被害者との関係を示したのが,III-42表である。無関係が69.6%で最も多く,次いで,顔見知り,友人・知人となっており,親族は極めて少ない。 III-42表 罪名別犯罪少年と被害者との関係(昭和49年) また,これを罪名別に見ると,無関係が多いのは,強盗の94.1%を最高として,窃盗,強制わいせつ,横領がこれに次いでいる。一方,顔見知りについては,脅迫,強姦,暴力行為等処罰に関する法律違反,傷害などが比較的大きい割合で関連を示している。更に,友人・知人との関係については,暴行,傷害,強姦などの粗暴犯や性犯罪において大きい割合が見られ,また,実数は少ないが,殺人,暴行,傷害など人身犯の被害者に親族の割合が大きい。次に,法務省特別調査によって,罪名と被害金額との関係を見ると,III-43表に示すとおり,全体としては,被害金額1万円以上5万円未満が35.5%で最も多く,次いで,5,000円以上1万円未満の24.3%,5,000円未満の23.6%となっている。全体として,前年に比べ被害金額の高額化傾向がうかがわれる。 III-43表 罪名別被害額(昭和49年) なお,罪名別においては,窃盗による被害金額が他の罪名に比べて全般に高額であり,件数において窃盗に次ぐ恐喝,強盗では,被害金額の比較的少額なものが多い。(5) 少年を取り巻く社会環境 最近の少年犯罪においては,遊興的,享楽的な犯行が少なくないが,その社会的背景として,少年を取り巻く社会環境の悪化に注目する必要がある。
III-44表は,風俗営業等としての深夜飲食店,モーテル及びトルコ風呂その他について,最近5年間におけるその営業(所)数の推移を示したものである。最近5年間に,深夜飲食店及びトルコ風呂は,依然として増勢を示しているものの,その他の諸営業はおおむね減少ないし横ばい状況にあり,特に,モーテルの減少が顕著である。これらの諸営業の増減は,社会的,経済的諸条件によって規定されるものであろうが,深夜飲食店及びトルコ風呂の漸増は,やはり,社会一般の刺激的,享楽的風潮の進行を反映するものとして,その動向を注視しなければならない。 III-44表 風俗営業等の営業(所)数の推移(昭和45年〜49年) また,III-45表は,大多数の地方自治体が制定している青少年保護育成条例により,青少年の健全育成上好ましくないものとして,有害指定を受けた映画,雑誌等の指定件数の推移を昭和45年以降について示したものである。有害指定の総件数及び指数は,47年をピークとして,以後下降しているものの,内容的には,映画,広告物等の指定の下降傾向に対して,不良図書の引き続く上昇傾向など,なお問題は少なくない。III-45表 青少年保護育成条例による有害指定件数(昭和45年〜49年) |