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 昭和50年版 犯罪白書  

はしがき

 この白書は,昭和49年を中心とした最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を概説したものである。
 最近の犯罪情勢は,一部の犯罪を除いて,比較的安定しているといえるが,技術革新などに伴う急激な社会変動と国民の価値観,行動様式の変化は,犯罪の規模と形態の変容をもたらしている。このような観点から最近の犯罪及び犯罪者の質的変化を探るため,本白書では,特に,社会の進展に伴う犯罪の変化を考察するとともに,最近の処遇対象者の特徴について解説した。また,最近の暴力犯罪に関しては,暴力団体の広域化,系列化が指摘されているのに加えて,過激派集団相互間の対立抗争事件が激化するとともに,青少年の暴走族などによる新しい形態の集団暴力事犯が世間の注目を集めているので,これらの暴力的集団の犯罪について詳しく説明した。
 本白書の編成は,例年どおり,全体を3編に分け,第1編では,昭和49年を中心とした最近の犯罪の一般動向とその変化を概観し,第2編では,検察,裁判,矯正及び保護の各段階を通じての犯罪者処遇の実情を紹介している。特に,保護関係については,昭和24年に犯罪者予防更生法が施行されて以来25年を経過したので,過去四半世紀にわたる犯罪者の更生保護に関する法制及び活動の発展経過について解説した。また,第3編では,特殊な犯罪及び犯罪者として,少年犯罪,暴力的集団犯罪及び交通犯罪について詳述している。
 終わりに,本白書を作成するに当たり,法務省各部局はもとより,最高裁判所事務総局及び警察庁から協力と援助を受けたことを感謝するとともに,本白書に関する責任は,専ら当研究所にあることを明らかにしておきたい。
昭和50年10月
鈴木 壽一 法務総合研究所長