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 昭和49年版 犯罪白書 第3編/第3章/第4節/2 

2 保護観察

 道路交通法違反及び業務上(重)過失致死傷(後者の大多数は車両運転によるもの)により昭和48年中に新たに保護観察の対象となった人員の概況は,III-156表のとおりである。同年の新受総数は1万7,392人で,この数は,全保護観察新受人員の37.7%に相当する。前年に比べ,この比率には目立った変化はない。保護観察の種別ごとに交通犯罪者の占める比率をみると,保護観察処分少年では59.0%,少年院仮退院者では2.7%,仮出獄者では24.1%,保護観察付執行猶予者では17.7%となっており,保護観察処分少年のうち約6割が交通事犯によるものである点が特に注目される。

III-156表 保護観察新受人員に占める交通犯罪者の人員(昭和48年)

 次のIII-157表は,最近5年間の新受人員を道路交通法違反と業務上(重)過失致死傷とに分けて掲げたもので,前年までは若干の起伏を示しながらも一般に漸増の傾向にあったが,昭和48年には,仮出獄者及び保護観察付執行猶予者の道路交通法違反者を除き,前年よりも減少し,総数は1万7,392人と,前年の1万9,071人より8.8%の減少となった。

III-157表 交通犯罪の保護観察対象者受理状況(昭和44年〜48年)

 次に,保護観察処分少年の受理状況を保護観察所別にみたものがIII-158表である。同表は,昭和48年中の保護観察処分少年新受人員総数の大小により各庁を横軸で3区分し,縦軸では保護観察処分少年新受人員中に占める交通保護観察少年の構成比を5段階で示している(支部は便宜独立に取り扱った。)。これによると,4割以上の23庁は,交通犯罪少年の比率が40%以上60%未満のところに集中しているものの,全体では,10%に達しない庁から80%を超える庁までにまたがっており,分散がかなり大である。現状では,各家庭裁判所が交通犯罪少年に対してどの程度保護観察を選択するかが,各保護観察所における保護観察処分少年事件の数全体を少なからず左右しているといえよう。

III-158表 保護観察処分少年新受人員中に占める交通犯罪少年の比率(保護観察所・同支部別)(昭和48年)

 以上のような差はあるにせよ,一般傾向として近年交通犯罪者が保護観察対象全体の中でしだいに大きな比重を占めるに及び,保護観察所においては,この種対象者に対する処遇の進め方が一つの課題となってきている。中でも少年の間では,違法行為に対する責任感が乏しく,保護観察を受ける意欲に欠ける場合が多い。また,一般の犯罪少年とは問題が多少違ってはいるものの,実務上観察されるところによれば,単に不注意から法規違反があったというにとどまらず,性格・態度等にかなり問題のある者も含まれている。自動車運転の適性を欠く者もまた少なくない。
 これらの理由から,各保護観察所では,ある程度一般犯罪者の場合と異なった方法を併用して処遇を行っている。中でも,集団処遇の方法が広く採用され,関係法規や運転技術の講習,交通事故事例の集団討議等を通じて遵法精神の助長や態度の改善が図られ,また,運転適性を欠く者に対しては,そのことを自覚させ他の方向に向かわせるような指導も行われている。
 交通犯罪による保護観察対象者の保護観察成績は概して良く,全保護観察対象者のそれと比べた概況はIII-159表のとおりである。なお,交通犯罪少年の保護観察手続については,昭和40年以降若干の特例が定められ,保護観察の成績が良好の場合の解除のための条件期間も緩和されている。

III-159表 保護観察終了人員中交通犯罪者の終了事由別状況(昭和48年)