前の項目 次の項目 目次 図表目次 年版選択 | |
|
2 覚せい剤事犯に対する処分状況 昭和26年から48年までの覚せい剤取締法違反の処理状況を示したのが,III-123表である。これによると,48年の起訴人員は8,115人,不起訴人員は2,718人(うち起訴猶予が1,795人)となっており,起訴率は81.9%に達している。また,過去の起訴率については,26年から34年までは53%から79%の間を上下していたが,35年以降は80%以上の高率を維持している。
III-123表 覚せい剤取締法違反事件年次別検察庁新規受理人員及び処理人員(昭和26年〜48年) 次に,昭和31年から47年までの覚せい剤取締法違反事件の通常第一審裁判結果を示したのが,III-124表である。これによると,科刑状況については特別の傾向はみられないが,最近の数年間では,懲役の執行猶予率が上昇する傾向がみられる。47年の執行猶予率は53.2%となっている。III-124表 覚せい剤取締法違反事件通常第一審裁判結果(昭和31年-47年) また,最近5年間に覚せい剤取締法違反によって新たに刑務所に入所した受刑者の推移をみると,III-122表のとおりである。新受刑者は逐年激増しており,昭和48年には1,011人で過去5年間に約10倍の増加となっている。以上のとおり,最近及び戦後における麻薬・覚せい剤事犯に対する処分及び科刑状況を考察してきたが,戦後の我が国において,薬物濫用犯罪に対する厳正な取締及び処分が,この種の犯罪の防圧のために極めて効果的であったことを物語っている。もちろん,これらの司法上の処分も,麻薬・覚せい剤の中毒者に対する入院治療措置の強化及び薬害の周知徹底と薬禍追放のための国民運動と相まって,初めて有効適切な対策となったことを看過してはならない。 先に述べたとおり,最近の覚せい剤事犯の激増ぶりは目を見張らせるものがあり,この現状に対処するため,昭和48年11月に覚せい剤取締法が改正され,覚せい剤原料についての規制を強化するとともに,覚せい剤事犯に対する最高刑をへロイン並みの無期懲役にするなどの法定刑の引上げ等が行われた。今後の対策としては,これらの法改正の趣旨と過去の取締経験に徴し,覚せい剤事犯を含む薬物濫用犯罪に対して徹底した取締及び厳正な科刑を行うとともに,麻薬・覚せい剤禍撲滅のための広報・啓蒙活動等を含む総合的な施策を積極的に展開していく必要がある。 |