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 昭和49年版 犯罪白書 第3編/第1章/第1節/4 

4 女子少年犯罪

 一般に,女性犯罪は,男性の犯罪と比べて量的に著しく少数とされ,これに関しては,女性の心身の特性とそれに基づく社会的地位や役割など,多様な面から説明されるが,女子少年犯罪についても,同様の観点から別個の考察が必要である。
 III-11表は,昭和26年以降の女子少年刑法犯の検挙人員の推移(41年以降の総数には,交通関係による業務上(重)過失致死傷を含まない。)を罪種別に指数で示したものである。

III-11表 罪種別女子少年刑法犯検挙人員指数の推移(昭和26年〜48年)

 同表によると,昭和26年以降,漸減傾向にあった女子少年刑法犯は,32年から増勢に転じ,39年まで一貫して増加傾向を示したが,40年代に入ってから起伏の多い動きとなり,48年において,実数1万3,789人,指数148という26年以降最大の増加を示すこととなった。
 また,昭和26年以降において,交通関係による業務上(重)過失致死傷を除く少年刑法犯の検挙人員中に占める女子少年の割合は,48年が最大であるが,その割合が最小であった31年と対比して罪名別に男女の構成比をみたのがIII-12表である。

III-12表 少年刑法犯男女別検挙人員の構成比(昭和31年・48年)

 これによると,昭和31年における少年刑法犯中,6.1%を占めるにすぎなかった女子少年犯罪は,48年では12.7%に達し,男子少年に比較して,その増加率は著しいものがある。
 更に,罪名別にみると,窃盗が昭和31年では約80%,48年では約90%と女子少年刑法犯の大多数を占め,依然として女子少年犯罪の特徴となっている。その他の罪名の占める比率は小さい。
 また,昭和31年において,比較的高率を示した詐欺,横領,放火,殺人等は,48年においては減少し,逆に,恐喝,暴行,傷害等の粗暴犯が増加して,窃盗に次ぐ主要罪名を構成している。
 なお,男女ともに構成比が増大している罪名は窃盗及び暴行,減小しているのは詐欺及び脅迫,横ばいであるのは賭博などである。
 検挙人員中に占める女子の割合が昭和31年より上昇している罪名は窃盗,詐欺,強盗,恐喝,暴行,傷害,殺人等である。粗暴犯のほか,実数は多くはないが凶悪犯を犯す女子少年の比率が増大していることは,注目すべき現象である。