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 昭和49年版 犯罪白書 第2編/第4章/第4節 

第4節 恩赦

 恩赦は,大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除及び復権の5種類からなり,公訴権を消滅させ,裁判によって確定した刑の内容を変更し,又は刑の効果を変更し若しくは消滅させる特異な行政権の作用である。恩赦は,政令で罪又は刑の種類等を定めて一律に行う場合(政令恩赦又は一般恩赦)と,有罪の確定裁判を受けた特定の者に対し,その犯情,行状,犯罪後の状況等を個別的に調査して行う場合(個別恩赦)とに区別される。個別恩赦は,更に,刑事政策的見地から随時行われる常時恩赦と,国家的慶事などに際して内閣の定める基準により一定の期限を限って特別の基準で行われる特別恩赦とに分かれる。
 昭和48年中に行われたのは,上記個別恩赦による常時恩赦だけである。
 II-120表は,最近5年間の常時恩赦の受理・処理状況を示したものである。昭和48年の新受人員は423人であるが,これを上申庁別にみると,保護観察所長からの上申199人,検察官からの上申126人,刑務所長からの上申98人の順になっている。

II-120表 常時恩赦の受理及び処理人員(昭和44年〜48年)

 次に,恩赦の申出をして内閣で相当との決定がなされた人員は414人で,既済人員の59.8%である。これを恩赦の種別にみると,復権が165人(39.9%)で最も多く,次いで,特赦の105人(25.4%),刑の執行の免除の97人(23.4%),減刑の47人(11.4%)の順となっている。
 昭和48年の恩赦について特に指摘しておかなければならないのは,尊属殺の罪により刑に処せられた者に対する個別恩赦の運用状況である。
 昭和48年4月4日,最高裁判所において尊属殺の罪に関する刑法200条の規定は憲法14条1項に違反して,無効であるとの判断がなされたことに伴い,尊属殺の罪により刑に処せられた者のうち,酌量すべき情状があるにもかかわらず,法定刑が死刑及び無期懲役のみであるため重い刑が言い渡されたと認められるものについて,個別恩赦が考慮された。49年3月15日現在におけるその受理及び処理状況は,前掲II-120表中48年分に付記した(法務省保護局調査による。)。これによると,受理総数は92人で,うち恩赦相当とされたものは37人,不相当とされたものは52人となっている。恩赦相当とされたものを恩赦の種別にみると,減刑22人,刑の執行の免除15人となっている。なお,無期刑に処せられたものについては,14人の上申があったが,保護観察所長上申の2件について刑の執行の免除が行われ,その他は恩赦不相当とされている。