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 昭和49年版 犯罪白書 第1編/第3章 

第3章 都市化及び地域開発の進展と犯罪

 社会の変動に伴って犯罪現象もまた流動する。この両者の関連については昭和47年版の犯罪白書以来特に関心を払ってきたところである。すなわち,47年版の白書では,人口移動との関連において,都市と地方,都市とその周辺部の地域を比較検討することによって,我が国の犯罪動態の考察を試みた。次いで,48年版の白書では,我が国における犯罪の地域的特性とその動向について分析し,最近の都市問題の重要性にかんがみ,我が国及び欧米諸国の大都市における犯罪動向の国際比較を行いつつ,大都市犯罪の現況を考察した。
 本白書においては,まず,戦後における犯罪発生状況の推移を概観しつつ,これと関連すると思われる社会的諸条件について検討を加え,社会の変動に伴って流動する犯罪動向の分析を試みる。次いで,都市化・工業化など急激な社会の変動が現に生じつつある開発地域及び中小都市を取り上げ,その変動の段階と犯罪動向との関連について考察することとする。地域開発は必然的に急激な都市化・工業化を促進するので,そこにおける犯罪動向は,犯罪を防止しつつ開発を進展させるための方策を樹立するうえで極めて重要な示唆を与えると考えられ,また,都市犯罪のうち大都市圏の犯罪はおおむね鎮静化しつつあるが,社会の変動の激しい地方中核都市においては必ずしも同様の傾向を示すとはいえず,中小都市における犯罪対策は現在緊急の課題であると考えられる。