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 昭和48年版 犯罪白書 第2編/第3章/第1節/4 

4 無期刑・長期刑仮出獄者の概況

 先のII-84表にも掲げたとおり,仮出獄者の大多数は,刑期の比較的短い者(刑期2年以下の者が定期刑仮出獄者の74%を占めている。)である。しかし,他面,無期刑・長期刑仮出獄者は,全体からみると少数ではあるが,重い罪を犯して長い施設生活を体験しており,また,長い保護観察期間を残していることからしても,その仮出獄後の状況については特に関心が寄せられるところである。
 そこで,まず,法務省保護局が行った調査によって,保護観察下にある無期刑仮出獄者の概況をみると,昭和47年末現在における全国の総数は775人で,そのうち,女子は9人,外国人は50人であった。仮出獄してからの経過期間をみると,5年未満が366人(47%),5年以上10年未満が250人(32%),既に10年以上経過した者が159人(21%)である。これらの者の居住状況をみると,親族と同居が477人(62%)で最も多く,単身居住の109人(14%)がこれに次ぎ,雇主方又は寮の61人(8%),更生保護会の22人(3%),その他となっている。なお,配偶者のある者は469人で,全体の約6割である。
 次に,これらの者の社会での適応状況を若干の項目に現れた百分比によって拾うと,家族との折合い(項目非該当者215人を除く。)においては,良が77%,普通が21%,不良が2%となっている。次に,就業状況では,無職者が全体の5%,生活程度が貧困又は極貧とみなされた者は9%にとどまっている。更に,保護観察の成績は,良66.3%,やや良15.5%,普通11.9%,不良0.4%,その他5.9%という状況で,保護観察実施中の無期刑仮出獄者の社会における生活状況は,全体的にみて,概して安定しているように思われる。
 しかし,これらの者がある程度の安定を遂げるまでには,更生の途上で種々の困難を経ていることが別の資料から推定される。昭和45年1月1日から47年10月末日までに出所した無期刑又は刑期4年以上の仮出獄者363人について,法務総合研究所が実施した調査によると,出所直前,社会復帰について何らかの目立った不安を抱いていた者は約半数(49%)を占め,また,出所後調査時までの平均1年10月間に,更生を妨げる重大な何らかの危機を体験した者は45%に及んでいる。
 同調査により,無期刑・長期刑受刑者の仮出獄時の引受人及びその後の転居の有無をみると,II-89表のとおりである。すなわち,釈放時妻のもとに帰った者は約9%,親もと47%,その他の親族のもと29%となっており,残りの16%は,雇主,知人その他の引受人のもと又は適当な引受人がないために更生保護会に帰っている。ところで,それらの者の転居の有無をみると,出所後平均1年10月の間引き続き同じところに居住している者は,半数を下回る45%にすぎず,転居1回は32%,2回以上は23%となっており,出所後直ちに安定できなかった者がかなり多数にのぼることを物語っている。中でも,妻又は親以外の引受人のもとに帰った者の間では転居の率が著しく高く(70%)なっている。

II-89表 無期刑・長期刑仮出獄者の出所時引受人及び転居回数の構成比(昭和45年1月1日〜47年10月31日)

 次に,これら仮出獄者の調査時における行状等に照らした更生の見込みについてみると,II-90表のとおりで,総数のうち,更生確実と認められた者は57%,多少疑問はあるが更生がおおむね期待できると認められた者は37%に及び,他方,かなり問題があって,強力な指導と援助が欠かせない者は6%強にとどまった。なお,同表は,更生確実の域にある者の率が,妻又は親のもとに帰った者の間でやや高いことを示している。

II-90表 無期刑・長期刑仮出獄者の出所時引受人及び更生見込み程度の構成比(昭和45年1月1日〜47年10月31日)

 最後に,II-91表によって,それらの仮出獄者がどの程度現在の生活条件に満足を示しているかをみると,不満を示している者の率は,家庭について約7%,職業・職場について15%,収入・生計について29%であり,3つの項目間に多少の相違はあるが,大多数は現状に多少とも満足を見出し,安定を示しているように認められる。

II-91表 無期刑・長期刑仮出獄者の生活条件に対する満足度別の構成比(昭和45年1月1日〜47年10月31日)