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 昭和48年版 犯罪白書 第1編/第4章/第2節/2 

2 ロスアンゼルス及びシカゴの犯罪動向並びにニューヨークとの比較

 1963年から1971年までの主要刑法犯の発生件数について,I-73表はロスアンゼルスの推移を,I-74表はシカゴの推移を示したものである。ロスアンゼルスでは,1963年から1971年までの間に,人口が248万人から282万人となり,1.14倍に増加したのに対して,I-73表によると,主要刑法犯の発生件数は,これを上回り,1.78倍に増加している。罪名別の推移では,すべての犯罪が増加しているが,1963年を100とする指数で1971年の発生件数を示すと,強盗が224,強姦が217,自動車盗が215,謀殺・故殺が214と,いずれも著しい増加となっている。

I-73表 主要刑法犯発生件数(ロスアンゼルス)(1963年,1965年,1967年,1969年,1971年)

I-74表 主要刑法犯発生件数(シカゴ)(1963年,1965年,1967年,1969年,1971年)

 次に,シカゴでは,同期間内に,人口が355万人から337万人に減少しているのに対して,I-74表によると,主要刑法犯の発生件数は,1.23倍に増加している。また,罪名別の推移では,すべての犯罪が1.10倍ないし2.26倍に増加しているが,1963年の件数を100とする指数で示すと,1971年において,謀殺・故殺が226となっているのを始め,強盗が141,強姦が137,窃盗が125と増加しているのが目立っている。
 ところで,1971年におけるアメリカ合衆国の上記3都市の犯罪発生率(人口10万人当たり)を比較すると,主要刑法犯総数の発生率では,ロスアンゼルス(発生率8,436.5,以下,かっこ内は発生率を示す。)が最も高く,次いで,ニューヨーク(7,523.8),シカゴ(6,178.0)の順となっているが,謀殺・故殺では,シカゴ(24.5)が第1位であり,第2位がニューヨーク(18.6),第3位がロスアンゼルス(15.2)となっている。また,強盗では,ニューヨーク(1,131.1)が最も高く,シカゴ(713.2),ロスアンゼルス(502.4)と続き,強姦では,ロスアンゼルス(73.2),シカゴ(46.0),ニューヨーク(30.7)の順となっている。その他,窃盗及び自動車盗の合計では,ロスアンゼルス(4,661.0)が最も高く,次いで,シカゴ(3,911.6),ニューヨーク(3,607.7)の順となっている。
 以上述べたアメリカの都市犯罪の動向を要約すると,上記3都市の中で,ニューヨークは,主要刑法犯の増加率が最も高いが,発生率ではロスアンゼルスに次いで第2位となっている。しかし,罪名別にみると,ニューヨークにおける強盗の発生率は,上記3都市の中で最高であり,殺人の発生率もシカゴに次いで第2位となっている。ロスアンゼルスでは,主要刑法犯の増加率は,ニューヨークより下回っているが,発生率は,上記3都市の中で最も高く,罪名別にみると,強姦及び窃盗の発生率が第1位となっている。また,シカゴでは,主要刑法犯の発生率及び増加率は,他の2都市より低くなっているが,罪名別にみると,殺人の発生率は,ニューヨークを上回って最高の比率であり,強盗,強姦及び窃盗の発生率でも第2位となっているのが特徴的である。