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2 学校・職場 (一) 学生・生徒の犯罪 文部省の学校基本調査報告書によれば,昭和四六年における学齢児童の義務教育就学率は,ほぼ一〇〇%に近く,また,義務教育終了者のうち,高等学校(定時制を含む。)に進学する者の割合は,三〇年において五一・五%であったものが,四六年には八五・〇%に増加している。さらに,高等学校終了者のうち,大学(短大を含む。)に進学する者の割合も,三〇年において一八・四%であったものが,四六年には二六・二%と増加している。
学生・生徒の学校程度と年少,中間,年長の各年齢層とを,そのまま対応させることには無理があるが,おおむね,中学生は年少少年の一部に,高校生は年少少年および年長少年の一部と中間少年に,大学生は年長少年に,それぞれ含まれている。法務省特別調査により,犯罪少年の学職別構成比をみると,III-24表が示すとおり,学生・生徒の占める割合は,年少少年で約八七%,中間少年で約四九%,年長少年で一六%となっており,一般の少年と比べて,低くなっている。また,学生・生徒でもなく,有職少年でもない無職少年が,なお,全体の一三%以上も占めていることは,一般に,進学や就職の機会が増大している時だけに,注目される。 III-24表 犯罪少年の年齢層別・学職別構成比(昭和46年) III-25表は,刑法犯(業務上(重)過失致死傷犯を除く。)で検挙された少年について学識別に,最近五年間における各年度別検挙人員および構成比を示したものであるが,これによると,学生・生徒の検挙人員は,昭和四四年まで減少していたが,四五年から増加に転じ,四六年に六四,三九四人と最近五年間における最高の数字を示している。構成比は,四二年に四六・四%であったが,その後逐年増加を続け,四六年には六〇・一%と,これも最近五年間における最高の数字を記録している。このように,最近,犯罪少年中に占める学生・生徒の比重の増加が目だってきているので,以下,その内容について検討を加える。III-25表 学職別少年刑法犯検挙人員(昭和42〜46年) III-26表は,刑法犯(業務上(重)過失致死傷犯を除く。)で検挙された少年について,学職別,学校程度別(小学生は,刑法犯検挙人員が少ないので除外する。)に,昭和四二年を一〇〇とする指数によって,最近五年間の推移をみたもので,学校程度別検挙人員を併記してある。まず,中学生においては,四四年の七八まで減少した後,四五年から増加に転じ,四六年には九六となり,四二年の水準に近づいている。次に,高校生においては,昭和四三年に九四と減少をみせた後,四四年,四五年と増加し,四六年には,前年よりわずかに減少し,ほぼ横ばいの状況を示しているが,四二年の水準をこえる一一八となっている。また,大学生においては,昭和四四年の一八〇をピークとして,四五年には一一九まで減少したが,四六年には再び増加のきざしをみせ,一三七となっている。四四年における大学生の急激な増加は,同年をひとつの頂点とする学生の集団暴力事件の影響によるものと思われる。III-26表 学職別・学校程度別少年刑法犯検挙人員の推移(昭和42〜46年) III-27表は,昭和四六年における中学生,高校生および大学生の少年刑法犯検挙人員につき,罪種別の増減状況を,前年との比較においてみたものであるが,これによると,増加が目だつのは,中学生における粗暴犯と大学生における財産犯,また,減少が目だつのは,高校生における凶悪犯と粗暴犯,大学生における粗暴犯である。なお,大学生における「その他」の増加も目だっているが,これは,放火,兇器準備集合,公務執行妨害などの罪名における増加の影響によるものと思われる。III-27表 罪種別・学校程度別少年刑法犯検挙人員増減率(昭和45,46年) また,III-28表は,参考までに,家庭裁判所が取り扱った一般保護少年について,教育程度別に人員および構成比を,昭和四〇年と四五年について比較したものであるが,これをみると,この五年間における変化として,中学卒業以下の者の減少と,高校卒業以上の者の増加が目だっている。III-28表 一般保護少年の教育程度(昭和40,45年) すなわち,構成比を比較してみると,中学在学者は二二・二%から一〇・一%へと半分以下の減少,中学卒業者は四一・九%から三二・四%へとほぼ一〇%の減少,逆に,高校卒業者は四・二%から一四・六%へと三倍以上の増加を示し,大学在学者も同様な倍率で増加している。(二) 有職少年の犯罪 近年における産業構造の変化は,都市産業の若年労働力に対する需要を高めているが,その反面,少年人口の減少や上級学校進学率の上昇によって,若年労働力の供給は低下しており,このような若年労働をめぐる需給関係の不均衡が,労働市場における勤労青少年の立場を有利にし,賃金を上昇させ,雇用の機会を増大させている。これは,一方では,喜ばしい現象といえようが,他方では,有利な状況に甘え,安易な転退職を繰り返しながら,転落の道をたどる少年も少なくないので,注意を要する。また,友人たちの上級学校進学をよそに,地方から大都市に流入してくる勤労少年の多くは,いわば,少数派であり,孤立感や疎外感にとらわれやすく,慣れない大都市生活に適応できずに,逸脱行動へと走る少年も少なくない。有職少年の犯罪を考えるにあたって,これらの経済的,社会的背景を無視することはできない。
昭和四六年における有職少年の刑法犯検挙人員(自動車交通に起因する業務上(重)過失致死傷犯を除く。)は,二九,五一三人で,四二年と比較して,一八,七九八人の減少を示し,四二年を一〇〇とする指数でみると,四六年は六一で,最近五年間に大幅な減少をみせている。また,少年刑法犯検挙人員中に占める有職少年の割合は,前出のIII-25表が示すとおり,昭和四二年に三七・三%であったものが,四六年には,二七・六%と減少をみせ,学生,生徒の割合の増加とは,対照的な動きを示している。 III-29表は,法務省特別調査によって,最近五年間における有職犯罪少年の職種別分布の推移をみたものである。これによれば,実数では,どの職種も減少をみせているが,構成比でみると,工員が若干の増加を示し,農・林・漁業および運転手・助手が減少を示しているのみで,他の職種は,ほぼ横ばい状態で推移している。昭和四六年においては,最も多くを占める職種は,工員の三九・一%で,店員の一四・九%,職人の一〇・一%が,これに次いで多い。最も少ない職種は,事務員の三・四%である。 III-29表 有職犯罪少年の職業別構成比の推移(昭和42〜46年) 次に,法務省特別調査によって,犯罪少年についての転職の有無をみると,III-30表が示すように,転職経験のある者は,就職経験者の五五%に及んでいる。最近においては,犯罪少年にかぎらず,一般少年の間にも転職経験者は多くなっており,転職が一般的な現象となりつつある時だけに,従来のように,転職経験をそのまま職業上の不適応や問題行動と考えることは適当でない。しかしながら,犯罪少年については,一般少年と比べて,頻回転職者が多く,そのうえ,転職によって労働環境や労働条件が悪化する場合が多いことは,しばしば指摘されることであり,これらの点は,勤労少年の非行化防止対策を考えるうえで,十分留意を要する問題である。III-30表 転職の有無と罪名(昭和46年) |