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1 公務員犯罪の受理と処理 公務員による犯罪には,たとえば収賄のように,公務員の職務に関して行なわれるものと,その職務に関係なく行なわれるものとがあるが,ここでは,その両者を含めて公務員により行なわれたすべての犯罪について述べることとする。I-65表は,昭和四二年以降,検察庁で新たに受理された公務員犯罪(道交違反を除く。)を主要罪名別に集計したものであるが,公社や公団の職員のような,いわゆる「みなす公務員」による犯罪は含まれていない。同表によると,公務員犯罪全体の受理人員は,昭和四二年以降逐年増加を続けているが,その増加の主たる原因は,自動車の普及による業務上(重)過失致死傷が激増していることによるものである。業務上(重)過失致死傷については,統計の都合で,四三年以前の数字を比較できないが,同罪の受理人員の公務員犯罪全体の受理人員に対する比率は,四四年に六四・三%,四五年に七一・二%,四六年に七五・〇%に及んでいる。
I-65表 公務員犯罪主要罪名別検察庁新規受理人員(昭和42〜46年) 昭和四六年の数字を前年と比較すると,増加したのは,特別法犯と,刑法犯では,右の業務上(重)過失致死傷のみであるが,五年前の四二年の受理人員を一〇〇とする指数によると,刑法犯のうち,業務上(重)過失致死傷を含むその能の刑法犯は二〇〇をこえ,窃盗,職権濫用,偽造は,いずれも一〇〇をこえている。公務員犯罪の中で,とくに注目される収賄は,昭和四三年,四四年と増加を続けたが,四五年から減少に転じ,四六年にさらに減少した。この種犯罪は,収賄者,贈賄者の双方が罰せられ,特定の被害者が存在しないから,きわめて潜在性が強く,その取締りが困難であるため,相当数の暗数がありうると考えられる。次に,検察庁における公務員犯罪の処理状況を,最近五年間についてみると,I-66表のとおりである。各罪名別に,その処理状況をみると,まず,職権濫用の起訴率のきわめて低いことが目につくが,この種事件の大部分は,警察,検察庁,裁判所,矯正施設などの職員に対する告訴,告発事件であって,もともと犯罪とならないもの,告訴,告発時にすでに公訴時効が完成しているものや,犯罪の嫌疑がないか,あるいは不十分なものが多いためである。逆に,最も起訴率が高いのは,業務上(重)過失致死傷であるが,その起訴の多くは,略式命令を請求したものである。したがって,実質的に,最もきびしい処理がなされているのは,起訴率がおおむね五割をこえ,最近では六割に近い収賄といえよう。窃盗,詐欺,横領,偽造の起訴率は,あまり高くないが,この種の公務員犯罪は,犯人が初犯者で,被害も回復されている事例が多いことなどによるものと考えられる。 I-66表 公務員犯罪主要罪名別起訴・不起訴人員と起訴率(昭和42〜46年) |