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 昭和46年版 犯罪白書 第三編/第一章/四/3 

3 鑑別の概要

 少年鑑別所の鑑別受付状況は,III-66表のとおりである。昭和四五年における受付人員を,家庭裁判所関係,法務省関係,一般の別にみると,家庭裁判所関係は,総数の四六・七%にあたる三一,〇六一人であり,法務省関係は,総数の四・一%にあたる二,七四九人,一般は,総数の四九・二%にあたる三二,六八〇人となっている。最近五年間の推移をみると,受付総数においては昭和四二〜四三年に小起伏をみせてはいるが,昭和四一年以降大きく減少傾向を示している。総数に対する構成比においては,昭和四一年以降,法務省関係の四〜五%を除いて,残りを家庭裁判所関係と一般とがほぼ折半してきているが,昭和四三年以降においては,わずかながら,一般が家庭裁判所関係をしのぐにいたっている。

III-66表 少年鑑別所の受付状況(昭和41〜45年)

 鑑別には,対象少年を少年鑑別所に収容して行なう場合(収容鑑別)と在宅のままで行なう場合(在宅鑑別)とがある。家庭裁判所関係の鑑別について,収容,在宅の場合別に受付人員数をみると,在宅鑑別は逐年増加し,昭和四五年においては収容鑑別二一,八九四人(受付人員総数の三二・九%)に対し,在宅鑑別九,一四六人(同一三・八%)となっている。在宅鑑別受付人員の増加は,交通事犯少年の在宅鑑別請求の急増によるものである。
 次のIII-67表は,法務省矯正局の調査による交通事犯関係少年に対する鑑別実施人員を示したものである。昭和四五年においては,九,五三五人について実施しており,五年前の昭和四一年のそれの約一・八倍となっている。またそのうち,一,二六三人については収容鑑別を,八,二七二人については在宅鑑別を行なっており,在宅鑑別が総数の約八七%を占めている。昭和四一年におけるそれらとの比較をみると,収容鑑別においてはその約〇・九倍と若干減少しているのに対し,在宅鑑別においては約二・一倍になっており,顕著な増加を示している。

III-67表 交通事犯少年鑑別実施人員(昭和41〜45年)

 鑑別は,医学(精神医学を含む。),心理学,社会学,教育学等の専門的な知識・技術がとり入れられて行なわれるが,具体的には,鑑別の請求または依頼に伴って示されている問題と,その参考資料や初回面接・検査・行動観察等の所見を参考として,鑑別方法が選択される。それがいわゆる鑑別コースの指定である。施設の規模によって若干の相違はあるが,家庭裁判所関係の収容鑑別における一般的な例を示せばIII-5図がそれである。鑑別コースにおいては,問題との関連を焦点にしつつ,資質の解明という目的に照らして,身体状況の調査はもとより,各種の心理テスト,面接,行動観察,生活歴調査などがそれぞれ担当の職員によって実施され,さらに必要に応じて脳波測定や学力検査,職業適性検査,自動車運転適性検査などが行なわれる。これらの心理テストのなかには,法務省式人格目録,同文章完成法,同態度検査のように,法務省において作成されたテストも含まれている。

III-5図 少年鑑別所における鑑別コース

 家庭裁判所関係の鑑別終了者の知能指数段階別人員と最近五年間のその構成比の推移を示したものがIII-68表である。これによると,例年のことながら,一般少年の知能指数の分布である,一〇〇を頂点とした正規分布曲線に比較し,収容少年の分布曲線はやや低い方にずれている。なお,その推移をみると,わずかながら,知能指数七九以下は減少し,知能指数九〇以上が逐年増加し,収容少年の知能指数の分布は年々一般少年のそれに接近していることが明らかである。

III-68表 知能指数段階別人員の比率(昭和41〜45年)

 また,家庭裁判所関係の鑑別終了者の精神状況診断結果は,III-69表のとおりである。昭和四五年において,知能が限界級のものおよび性格異常のものを含む「準正常」のものが例年のとおり最も多く,八七・二%を示し,次いで「精神薄弱」五・三%,「正常」四・二%,「精神病質」二・四%の順となっている。「精神病質」の占める比率はわずかながら逐年減少し,「精神薄弱」についても昭和二五年ないし三〇年以降を五年ごとにみるとその比率の減少は著しい。

III-69表 精神診断別人員の比率(昭和41〜45年)

 少年鑑別所における鑑別の結果は,さきにあげた種々の方法によって得られた各種の資料,診断,さらにはこれらが総合されて,非行と関連する問題点とその分析,処遇上の指針,社会的予後,医療的措置の必要の有無などを含み,本人にとって最も適切と判断される保護指針が判定され,家庭裁判所に通知される。関係機関などからの依頼による場合,それらの鑑別結果はこれに準じた形で依頼先に通知される。
 家庭裁判所に送付される鑑別結果通知書においては,
[1] 保護不要(保護措置を必要としないもの)
[2] 在宅保護(在宅のまま補導すればよいもの)
[3] 収容保護(少年院,教護院または養護施設に収容を適当とするもの)
[4] 保護不適(社会的危険性のある精神障害者で,精神衛生法による措置入院を適当とするもの,または保護処分にすることが不適当と認められるもの)
などの判定区分によって記載されるが,III-70表は,家庭裁判所において審判決定のあった人員に対する鑑別判定別人員を示したものである。例年,その約六〇%は在宅保護と判定されているが,昭和四五年においても五八・九%を占める一二,三六二人は在宅保護と判定され,また,少年院や教護院・養護施設等への収容保護が適当と判定されたものは,総数の二七・三%にあたる五,七三五人であり,そのうち少年院に収容することが適当と判定されたものは,総数の二六・三%にあたる五,五二〇人(うち男子五,〇五三人,女子四六七人)である。最近五年間のこの推移をみると,実数においては,すべて逐年減少しているが,初等少年院については,前年に比べ昭和四五年において三九人の増加がみられる。各年の構成比においては,昭和四四年のそれに対し,昭和四五年において,多少変化のきざしがみられ,保護不要,在宅保護,保護不適は減少を,初等少年院,中等少年院への収容保護はわずかながら増加を示している。

III-70表 鑑別判定別人員の比率(昭和41〜45年)

 次に,家庭裁判所における審判決定の状況を,審判決定別人員によってみたのが,III-71表である。昭和四五年において,少年鑑別所入所中,審判決定のあった人員のうち,在宅保護に相当する保護観察が三一・二%にあたる六,五五六人で,例年どおり最も多い。少年院送致は,初等少年院一・六%,三三一人,中等少年院一二・九%,二,七〇〇人,特別少年院二・七%,五五九人,医療少年院一・四%,二八九人で,少年院の合計では,一八・六%,三,八七九人である。最近五年間の推移をみると,実数においてすべて減少傾向にあるが,昭和四五年においては,それぞれ初等少年院送致二七人,教護院・養護施設送致七人が前年に比べ増加している。構成比の推移において,前年に比較し,減少しているものは,不開始・不処分,特別少年院送致等であり,増加しているものは保護観察,初等少年院送致,中等少年院送致,教護院・養護施設送致,試験観察等である。収容保護に限ってみると,実数においては,昭和四一年に八,一四四人であるのに対し,昭和四五年においては四,〇六七人で,ほぼ半減している。その総数に対する構成比は,昭和四一年において二二・七%,昭和四五年一九・八%であり,減少傾向にあるが,昭和四四年のそれと比較すると,昭和四五年のそれは約二%の増加を示している。

III-71表 審判決定別人員の比率(昭和41〜45年)